次のタネをまく
▲比較.comの出発点は「週末起業」だった |
よく「成功と失敗はコインの表と裏」という。
手痛い失敗を経験したITバブル期、渡邉氏は「成功のタネ」をまくことに成功している。現在も趣味だという海外旅行の経験を生かし、航空会社のマイレージサービスの比較サイトを立ち上げた。あくまで趣味的なもので、副業と呼べるほどでもなかったが、忙しい仕事の合い間をぬって運営したサイトが「比較.com」の原型になった。
「hikaku.comというドメインを取得したのもそのとき。今では絶対に入手できないでしょう。当時はドメインの価値すら分かっていなくて、年間1万円ぐらいかかるドメインの維持費用すら高いと思っていたほど。平日の夜や週末に喫茶店にノートパソコンを持ち込み、サイトの更新などの作業をしていました」
「普段は仕事に追われ、せめて休日は休みたい」という多くの人からすれば、本業に加えさらに別のことにチャレンジするのは、なかなか難しいことかもしれない。しかし変化の激しいこの時代、次に何が起きるか分からない。「リスク対応力」を高めるためにも、資格取得、副業、自己啓発など、何か1つぐらい新しいことにチャレンジしておきたい。
小さく生んで、大きく育てる
現物出資を含む資本金250万円で設立された「比較.com」だが、ベンチャーキャピタルの経験を生かせば、もっと多くの資金を集めることができたはず。それでも最初から多額の資金を投入する大勝負を避け、出来ることろから始め、少しずつステップアップした渡邉氏の進め方は、キャリアプランを考える上でも大いに参考になるやり方である。
比較サイトでの起業を決意した渡邉氏は、退職する半年前から準備をスタートしている。サイトリニューアルなど、会社員生活を続けながらできるものを優先。退職1カ月前からは営業活動を始め、月額1万円程度という“お手軽”な広告枠を設定した。
「まあ、いいか」と担当者決裁で出せる金額だったため、初月から早くも約20万円の収入を確保することに成功。創業期の“出血”を最小限に止め、その後徐々に広告単価をアップしていった。