キャリアプラン/キャリアプラン事例

マネックス松本社長のマネジメント力(4ページ目)

「10億円捨てた男」という異名を持つ、マネックス証券松本大社長。30歳で世界的な投資銀行のパートナーとなり、マネックスを成功に導いた仕事術とは?「マネジメント」と「情報分析力」に注目。

執筆者:角田 正隆

考える習慣

本質を見抜く目
自分の頭で考える習慣が、本質を見抜く目を鍛えた 
ところが松本氏は、そこにメスを入れた。必ずしも「金利引き下げ」と「株安」は、因果関係があるわけではないし、影響があったとしても「○○円」の変化のすべてを「金利引き下げ」で説明できる保証はないと考えた。

そこで金利や株価に影響を与えそうな、主要データが発表される前に、「一般に予想されている平均的な数値」を算出しておいた。さらに、実際に発表された数値が「予想より高かった場合」「予想より低かった場合」を事前にシミュレーション。それぞれのケースの株価や金利を予想した。

そうして予定と実績を細かく検証するうちに、一般に説明されている「金利の引き下げ」といった情報が、必ずしも主な価格変動の原因でなかったりする事実に気づく。自分の頭で考え、それをチェックするサイクルを繰り返すうちに、本当に金融マーケットに影響を与える情報と、そうでないものを判別する力を付けたのだ。

想定の範囲内とは?

トーキョー金融道
『トーキョー金融道』(藤巻健史×成毛眞×松本大)
“想定の範囲内”といっても、元々想定していなければ、範囲の内か外か見当がつかない。さらに言えば、範囲内だとしても“ど真ん中”なのか、“ギリギリ内側なのか“では意味合いが違う。「その結果がもたらすその影響度は?」まで考え抜くと、株価の変動を1つの要因にまとめてしまう議論は乱暴なのかもしれない。

“間接情報”に依存せず、自分で集め加工した情報で判断する習慣が、あらゆる社会問題を一刀両断する、“松本流情報術”の核なのではないだろうか。

私がキャリアプランの相談を受けるとき、「“間接情報”に惑わされているのではないか?」と感じることが多い。確かに未経験の業界や職種について関心を持っている人の場合、間接情報に頼らざるを得ないケースがあると思う。だが、「本当にそうか?」という視点で、自分なりに情報を吟味することで、思い込みや勘違いに基づいてキャリアプランを立ててしまう過ちを防げるはずだ。

プロフィール

代表取締役社長CEO 松本 大 氏
 
マネックス・ビーンズ証券株式会社
代表取締役社長CEO 松本 大 氏


1963年浦和市生まれ。87年3月東京大学法学部卒業、同年4月ソロモン・ブラザーズ・アジア証券入社。90年4月ゴールドマン・サックス証券入社。92年5月にヴァイス・プレジデント、94年11月には、30歳で同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任した。創業者を除き、英語圏外で教育を受けた初のパートナーとなる。98年11月同社退社。99年4月マネックス証券(現マネックス・ビーンズ証券)設立、代表取締役社長就任。2000年8月東証マザーズ上場。著書に『10億円を捨てた男の仕事術』などがある。


松本氏の情報術を垣間見れる一例を挙げたい。

政府が発行する多額の国債、すなわち赤字国債が、大きな社会問題になっている。しかし、国の過大な借金が良くないことと直感的に分かっていても、具体的にどのような問題がはらんでいるかまで、新聞やニュースを見るだけでは、その真の問題点にたどり着けなかったりする。

ところが松本氏の著書を読むと、郵貯や国民の税金などが、いかに国債に流れ込んでいるのかを大づかみで理解できる。これも外部の情報に惑わされず、着実に自分に必要な情報を集め組み立てる松本氏の情報術がなせる業だろう。<参考『松本大 こうすれば、日本はよくなる』>
 


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