乗り切るべき壁
だが、一流コンサルタントになる壁はもう1つ立ちはだかっていた。経営戦略コンサルタント基本スキルである、緻密なデータ分析を繰り返し、取るべき経営戦略を合理的にアドバイスする力は磨かれた。しかし、コンサルティングの世界では、それだけでは「一流」と評価されない。練り上げた戦略を実際にクライアントに採用してもらい実行に移さなくては、いくら素晴しい戦略を提案したところで、絵に書いた餅に過ぎない。一流コンサルタントは、「経営者の心をつかみ、自らの戦略を実行させる力」を持っているのだ。
情熱で「ひとこと」を引き出す
それが南場さんにとっての「壁」だった。ハーバード大MBAの明晰な頭脳を駆使すれば、合理的な戦略を導き出すことはできた。しかし、それだけでは経営者は動かない。1つの判断が会社の命運を左右し、企業の従業員だけではなく、その家族にも責任が生じる。よほどの信念と自信がなくては、経営者は大胆な意思決定を下せない。
あるプロジェクトで、どうしてもあるアメリカ企業を提携することが、ベストな選択肢とする結論が導き出された。そこで彼女はあらゆる手段を使って、クライアントの経営者に提案と説得を繰り返した。
南場さんが「事業提携すべき」と提案したアメリカ企業を何度も現地訪問。クライアントの社長も連れて、提携希望先のトップとの面談もセッティングした。
>その努力の成果は―――