キャリアプラン/キャリアプラン事例

苦境を救った「ひとこと」(2ページ目)

人間誰しも壁にブチ当たり、それを乗り越え大きくなる。しかし、壁が大きいほど悩みも深く、絶望感すら感じるときがある。そんな苦境を救うのが、思いがけない恩師や仲間の「ひとこと」だ!

執筆者:角田 正隆

「ロバート、君は何をやりたいの?」

カルビンの鋭い指摘に、思わず言葉が詰まる Vitzレースに参戦している
その“ひとこと”に出会ったのは94年10月。9月14日からビジネススクールの新学期が始まり、1月ほど経った頃である。クラスメートもまだ打ち解けてはおらず、ランチを食べながら親睦を深めようと集った席の出来事だった。

1人ひとり自己紹介を兼ねて「ビジネススクールに来た目的や将来の夢」を語っていた。「日本で銀行員をやっている」という近藤さんに対し、シンガポール出身のカルビンが噛み付いてきた。

「ロバート、君は何をやりたいの? 銀行員って何が楽しいんだ? 将来、何がやりたくて銀行員をやっているんだ?」

と矢継ぎ早に質問してきた。彼に対し近藤さんは、

「興銀は、鉄鋼会社を合併させて新日鉄を設立したり、山一証券の苦境を救うなど、日本の産業政策に大きな役割を果たした銀行なんだ。自分も日本の産業高度化に貢献したいと思っている」

「ロバート、全く意味が分からないよ。『日本の産業高度化』が君の人生に一体どんな関係があるの? それのどこが君にとってエキサイティングなんだ?」

「・・・・・・」。近藤さんは言葉に詰まった。


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