キャリアプラン/キャリアプラン事例

25歳会社員が夢と志で議員に(3ページ目)

大田区区議会の田中健議員(27)は、25歳で区議会議員に立候補し、見事当選、都内最年少区議会議員(当時)に就任。2世でも、地元でもない。1人のサラリーマンが、ゼロから議員になるストーリー

執筆者:角田 正隆

たった1人の選挙活動

ひたすら街頭演説した
議員になる最大のハードルは選挙。その選挙の戦い方に、政治家としての個性や思想がにじみ出る。

選挙は情熱だけで勝てるほど甘くない。議員インターンで選挙のやり方を知っているつもりだったが、田中さんが直面した現実は、予想以上に厳しいものだった。

現職がひしめく区議会議員選挙は、新人候補であれば、1年以上前から準備するのが定石とされる。しかし、田中さんが4月の選挙へ出馬を決意し、銀行を辞めたのは前の年の10月。残された時間は、わずか6ヶ月だった。

後援会も、支持母体もなかった

票の積み上げ方も、“政治のプロ”、特に現職候補は、自分の後援会を基盤に、自分を支持する団体や組織を徐々に増やしてゆく。現役議員は、諸団体の会合に呼ばれる機会も多く“ヨメる”票を獲得しやすい。

当然のことながら、新人候補の田中さんに、後援会もなければ、支持母体もない。これだけでも、コネのない新人候補が、現職を破る難しさがよく分かる。

結局、田中さんの選挙活動は、たった1人で街頭演説を始める以外なかったのだ。寒い冬の早朝から駅前に立ち、昼は商店街で主婦に、夕方は再び駅前で帰宅途中の会社員に毎日、マイクを握り続けた。

不安な選挙戦

雨の日も、雪の日も街頭演説を続けた
「それまで街頭演説は未経験だった」という田中さん。最初は声も出ず、聴衆も全く反応しなかった。自分の30センチ前を、自分を避けるように素通りする人ばかりだった。

支持母体がないことを逆手に取り、本当に自分が言いたいことを遠慮せずに訴えたつもりだった。しかし、「自分のメッセージは伝わっていないんじゃないか、と不安で眠れない毎日だった」と、その頃の心境を吐露する。

そんな日々が約2ヶ月続いた。投票日まで残された時間は少ないことを自覚していただけに、焦ってなかったといえば嘘になる。

ホットコーヒーの差し入れ

「街の人からすれば、最初は『誰だオマエ?』でしょうね。やはり、私は“よそ者”ですから、それも当然でしょう。今思うと、地域の人も私がどれだけ“本気”か試していたと思います」

「状況が変わるまで、だいぶ時間がかかりました。雨が降ろうが、雪が降ろうが、毎日、街頭演説を続けて2カ月経った真冬のある日、見知らぬ人がホットコーヒーを差し入れてくれたんです。嬉しかったですね。それからなんです。商店街で『いつも頑張ってるね』と声を掛けられたり、私をサポートしてくれるメンバーが集ってきたのは―――」


徒手空拳で始めた選挙活動だったが、わずかな「手ごたえ」を感じるようになってきた。

>>>カネを掛けない“手作り選挙”を実践>>>
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