マンション物件選びのポイント/マンションの間取り

マンションの何階に住む? 自分にベストな階数の選び方

全く同じ間取りでも階によって価格・家賃が変わるマンション相場。あなたならマンションの何階を選びますか? 遮音性、地震時の揺れ、省エネ性、防犯性(安全性)、虫の発生率などで階のメリットを比較。この記事を参考にベストな階数を見つけてください(2018年12月改訂、初出2006年6月)

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

階数によって変わるマンション価値

マンションは、全く同じ間取りでも、住戸のある階によって価格や家賃が異なり、上階になるにしたがって高くなる傾向があります。最上階の方が見晴らしもよいし、ステータス感もあるし、住んでみたい! と考える方も多いと思います。でも本当に最上階は住み心地が良いのでしょうか?
自分にとってベストな階を見極めよう

自分にとってベストな階を見極めよう

過去に行った「マンションの何階に住みたいですか? それを決めるポイントは何ですか?」というアンケートの投票結果より、マンション購入の決め手となるポイントや、性能面から見たオススメの階はどこか、見ていきたいと思います。

【目次】

マンションの何階に住みたいですか? 選ぶときのポイントは?

それでは投票結果の発表です。

Q:マンションの階を選ぶときのポイントは?

第1位:見晴らしや景色の良さを重視する 39%
第2位:遮音・防音性を重視して選ぶ 28%
第3位:省エネ性を重視する 22%
第4位:地震の揺れの少なさを重視する 11%

この投票結果では、見晴らしや景観の良さを重視する方が約4割いて最も多く、マンションの上層階の人気が高いことがわかります。
自宅から毎日こんな景色が望めたら!毎日の生活も違ったものになるかもしれませんね。

自宅から毎日こんな景色が望めたら!毎日の生活も違ったものになるかもしれませんね。

高層階は、窓から見える美しい景色、解放感、それにより安らぎを受けるといった心理的な作用もあります。それに加え、高層階は住戸面積を広げ、内装をゴージャスに仕上げることでステータス感を演出するなど付加価値を高めて売られることが多く、高い人気を保っています。都心ではタワーマンションが建てられていますが、ニーズが見込めるからこその建設といえるでしょう。

マンションで1番問題が起きやすいのが騒音問題といわれ、その点を重視して選ぶ方が2番目に続いています。そして省エネ性、地震の揺れと続きます。

それでは、遮音性、省エネ性、地震時の揺れの順におすすめの階を見てみましょう。
 

遮音性・防音性を重視して選ぶなら

2番目に気になるポイントである音の問題。まずはマンションそのものが遮音性の高い仕様になっていることが大事です。また、上下左右の住戸にどんな人が住むかによっても変わってきます。
 
マンションは多くの人が住む集合体。お互いにマナーを守って生活することも大切です

マンションは多くの人が住む集合体。お互いにマナーを守って生活することも大切です

生活音は一般的に上層階ほど低減します。ですので、大人だけで構成されるファミリー、静かな環境がよいファミリーには上層階がお勧めです。ただし、高層階では遠くの高速道路の音や風の音が下層階に比べ、大きく聞こえることがありますので、そんなことも頭の片隅に入れておいてください。

足音が気になる小さなお子さんのいる家庭では、下階への影響を考えると最下階がお勧めです。このような条件を念頭に、ご自分に合った階を選んでください。
 

省エネ性を重視して選ぶなら……「中間階の中住戸」

省エネ性で選ぶなら、最上階・最下階よりも中間階がオススメです。また、平面的に見て端っこに位置する妻側住戸より、下のイラスト〇で囲まれた位置のように両側を住戸にはさまれた位置のほうが省エネ性が高くなります。この位置にある住戸を「中住戸」といいます。
 
○のついた住居が省エネ性が高い住居です。

○のついた住居が省エネ性が高い住居です。

最下階は床下からの冷気で部屋の暖房効率が落ちること、最上階では屋上の日射の影響で冷房効率が落ちることが理由です。

また、妻側住戸は外壁や窓が多く、そこから熱の出入りがあり、室内を快適に保つのに余分なエネルギーがかかります。妻側に面した部分の押入れ・クローゼットは結露が発生しやすい場所なので要注意です。

一般的には最上階、専用庭のついた最下階、妻側住戸は人気がありますが、省エネ性という観点からは、やや不利な位置にあるといえます。事前にこのことを知っているだけでも、購入するときにどのような断熱対策を取っているか? という視点を持って選べるので、良い住まい選びにつながっていくでしょう。
 

地震の揺れを重視して選ぶなら

一般的に、中高層マンションでは最上階が1階より2~3倍大きな揺れになります。直下型地震では上層階のほうが揺れが少ないこともありますが、巨大地震では上層階が大きく揺れます。基本的に、上層階の方が揺れが大きいと考えておきましょう。

参考に、超高層マンションと中低層マンションの揺れ方を比較してみます。特徴として、中高層マンションの揺れは揺れ幅は狭いが激しく揺れるのに対し、超高層マンションでは揺れ幅は大きくゆっくり揺れることが挙げられます。
【図1】地震時の高層マンションと中低層マンションの揺れの違い。建物重量あたりの地震力は、超高層・高層の方が中低層より小さい(出典:図解雑学「地震に強い建物 安震技術研究会 ナツメ社)

【図1】地震時の高層マンションと中低層マンションの揺れの違い。建物重量あたりの地震力は、超高層・高層の方が中低層より小さい(出典:図解雑学「地震に強い建物 安震技術研究会 ナツメ社)

ただし、地震の規模や震源によって建物への影響は変わり、またその高さや構造によって、建物は固有の揺れ方をします。あくまで参考としてご覧ください。

最近では揺れを大幅にカットする免震マンション・制震マンションも建設されているので併せて検討すると良いでしょう。
 

防犯性を重視して選ぶなら

防犯性の観点では、どの階が良いといえるのでしょうか?
このように、侵入等は屋上からセットバック住戸の部分を使って降りて来ることもあります。上層階=安心ではないのです。

このように、侵入等は屋上からセットバック住戸の部分を使って降りて来ることもあります。上層階=安心ではないのです。

侵入盗は、玄関や窓などの開口部から入ってきます。マンションでは外廊下側とバルコニー側に開口部が集約されています。バルコニー側からの侵入経路を考えると、1~3階くらいまでは、侵入しやすい階だといえます。2、3階でもそばにある木やフェンス、雨どいなどを伝って侵入することができるからです。

では最上階は安心なのか? というとそうでもないのです。いくらオートロックがついていても、そこを何らかの形で突破し、いったん中に入り込んだ侵入盗はエレベーターや外階段で自由に移動できます。そして屋上に登り、そこから雨どいを伝って下に降りることも十分可能です。

特にマンションの上層階では「ここまで泥棒も来ないだろう……」と油断して窓を開けっぱなしで寝る人も多く、そういう住戸は侵入盗に狙われやすいので要注意です。また、日影規制のために最上階が段々にセットバックしている住戸は、やはり雨どいを伝って上部から侵入盗がやってくる可能性があります。

このことも、知っていればあらかじめ対策を考えることができます。雨どいが伝いにくいようについているか、足がかりとなりそうなものはないか。購入前にチェックできれば安心です。
 

虫の発生率は……階数というより「環境」や「築年数」の影響も

虫が苦手な人にとっては「何階から上に住めば虫は来ないのだろうか」と気になるところですよね。例えば「蚊」に着目すると、上層階には蚊はこないというイメージがありますが、ガイドがマンションに住んでいる人やマンションの設計をしている人にヒアリングしたところ、17階にお住まいの方でもエレベーター内で蚊を見たことがあるとのことでした。

高層マンションの設計経験のある人から聞いた話では、蚊は上昇気流に乗って高層階にもやってくるようです。実際に地上20階、60メートルの高層マンションでも蚊はやってくるという前提で窓に網戸を付けたとのことです。

但し、20階を超え30階になると、風が強くなるためバルコニーも小さくなる傾向があり、窓もはめ殺し窓(FIX窓)が多くなるようです。バルコニーへはドアから出入りします。そうなると外部から蚊が入り込むことは考えにくくなりますが、それでも全く出現しないかというとそういうわけでもなく、例えば住人にくっついてエレベーターに乗ってやってくる可能性もあるようです。

どうしても蚊の来ない住戸に住みたい場合は、「階」よりも周辺の環境をチェックした方が良いかもしれません。周囲に緑地や水辺などがあり虫が生息しやすい環境であれば、そうでない環境に比べ蚊が発生する確率が高くなるでしょう。

ゴキブリについては、階数に関係なく築年数が経つと出現しやすくなるようです。新築のうちは低層階でも出ませんが、何年か経つと高層階でも見かけるようになるようです。ゴキブリは荷物や人にくっついてエレベーターに乗って移動することもできるようで、「エレベーター内で見た」という目撃情報も多数あります。
 

まとめ

下階部分で、例えば駐車場や共用施設の直上階の住戸の購入を検討するとき。省エネ性が多少劣るかもしれないという知識を持っていれば、どのような工夫でカバーしているか確認してから購入することができますね。

中高層マンションの最上階を検討する際に、揺れが大きいと知っていれば事前に家具転倒防止策を考えてから購入することができます。このように、階層ごとの特徴はなんだっけ? と頭の片隅にインプットしておいて、実際に階を選ぶとき、ぜひ参考にしてください。

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