既存不適格マンションの建て替えはほとんど不可能、の理由
建て替えパターンDの既存不適格の場合は、今の戸数を下回る減築となるため、建て替えはほとんど不可能です。建築基準法などによる制限が新たに施行されたり改正され、改正前の法令などには適合していたものの、新しい法令には適合しなくなった建築物のことを既存不適格といい、既存不適格マンションは1975年以前に建てられたマンションに多く見られます。というのは、マンションはそもそも住居地域で20m、その他の地域で31mという絶対高さ制限が適用されていました。その後、1970年に全面採用された容積率の既定により、それまで制限されていた高さの建物が建てられなくなりました。その後さらに、1976年に中高層の建物により生じる日影を一定時間内に抑えることにより、周辺の居住環境を保護するために、中高層建築物の高さを制限する日影規制が条例で定められました。
したがって、このような規制が導入される前に建てられた築30年超のマンションの多くは、既存不適格物件となり、今と同じ規模の建て替えが難しいとされているのです。減築ではあるが地下も活用するなどして、なるだけもとの戸数に近づくように建築しようとすると、1戸あたり3000万円以上の費用負担となり、経済的に対応できるのはごく限られた人たちということになります。
こうしたマンションは港区をはじめとした都心のマンションに多く見られます。そこで、隣接しあう老朽化したマンションをまとめて共同事業化したり、東京都などの所有する公的な土地との一体開発など、機会と条件が整えば、建て替えの可能性が出てくる物件は好立地のマンションであれば出現する可能性は考えられますが、稀なケースにとどまることになるのは否めないでしょう。
次のページでは、建て替えしやすいマンションのポイントをご説明します。