一戸建て購入/新築一戸建て購入

買うと借りるで、どちらがオトク?(2ページ目)

住宅を買うのと借りるのとでは、どちらがトクなんでしょうか。低金利のうちは買ったほうがトクという意見も多いようですが本当のところはどう? いろいろなところで比較検討されているテーマですが、費用の試算とは少し異なる視点で考えてみました。(2015年改訂版、初出:2003年10月)

執筆者:平野 雅之


10年分の家賃で家が買える!?

自分が住むためではなく、他人へ貸すために住宅を購入する場合もあります。不動産投資の一形態ですが、その際に使われるのが「利回り」という指標です。

利回りとは、年間の賃料を購入価格で割ったものであり、たとえば、3,000万円で購入した部屋を年額180万円(月額賃料15万円)で貸したとき、利回りは6.0%(180万円/3,000万円)となります。

なお、賃料を購入価格で割っただけの利回りは「単純利回り」あるいは「表面利回り」「グロス利回り」ともいわれます。それに対して、賃料から管理費修繕積立金固定資産税都市計画税などを差し引いた正味の手取り額を購入価格で割ったものは「正味利回り」「実質利回り」「ネット利回り」などともいわれます。

ちなみに、利回りの計算方法には実際に支出した資金(ローンを借りれば、購入金額をまるまる支出したことにはならない)を基にする場合などもあり、本格的に不動産投資をする場合はこちらを重視するでしょうが、購入者側の要素で数字が変わるため市場での物件比較にはあまり使われません。

不動産投資といえば、ワンルームマンションを思い浮かべるかもしれませんが、実際にはファミリータイプのマンションもその対象となっています。「分譲賃貸」といわれるものであり、1棟のマンションで所有者が部屋ごとに異なるものをあなたが借りているならこれに該当します。

その際の利回りですが、新築物件の場合は表面利回りで4%~6%程度のことが多いでしょう。

ところが、中古住宅として市場へ多く出回っている売り出し物件は表面利回りが7~9%といったところであり、実際に活発な取引がされているのは表面利回りが12%以上、税金や管理費などを除いても10%以上の利回りを確保できるような物件です。

このとき「オーナーチェンジ」といわれる取引で賃借人(実際に借りて住んでいる人)はそのままにして、所有者のみが変わるケースも多くなっています。

アパートや一棟売りのマンションでも同様にオーナーチェンジ取引が行なわれるため、これを読んでいる人の中にも突然「所有者が変わりましたので家賃の振り込み先を変えてください」という通知を受け取った経験のある人がいることでしょう。

利回りが10%ということは、つまり、あなたの家賃10年分相当でその部屋が売られているということにほかなりません。賃貸物件に住んでいる「あなた」が知らないうちに、「あなた自身(の家賃を受け取る権利)」が商品として出回っていることもあるのです。

中には、利回り20%あるいは30%というものすら存在します。もちろん、このような超高利回り物件は何らかの問題を抱えていてリスクが高かったり、売主の特殊な事情がからんでいたりするものですが、10%ぐらいの利回りでリスクの低い物件は決して珍しいものではなく、中古住宅市場の流通ルートには乗らないものも少なからずあります。

ローンを組んで不動産投資をすることはあまり勧めませんが、十分な市場調査をしたうえで現金投資をするのには面白い対象でしょう。


売買相場と賃貸相場のアンバランス

普通預金の金利が0.02~0.03%程度、長期の大口定期預金でも0.1%程度と低迷する中、不動産が高利回りで取引される背景のひとつとして、売買価格の低下に比べて賃貸の相場がさほど下がっていないことが挙げられます。

バブル期のように売買相場が高騰しても、賃貸相場はそれほど上がらないため、これが下がるときも緩やかだとする考え方もあるようですが、現状をみる限りでは明らかに売買相場と賃貸相場のアンバランスが生じているでしょう。

住宅を購入したら、いままでの家賃よりも少ない負担で5割ほど広い部屋に住み替えることができた、なんてレポートもみることができる所以です。

また、これまでの家賃とほぼ同じ負担でより広い部屋に住むことができるのであれば、同じ大きさの部屋に住むケースでは賃貸よりかなり安い負担で購入することができる、と言い換えることもできます。

上で「10年分の家賃相当額で購入できる物件も存在すること」を紹介しましたが、あくまでもこれは現金一括で支払った場合です。住宅ローンを借りれば、当然ながら金利分の負担が増えるでしょう。

冒頭で説明したとおり、本当に購入したほうが良いのかどうかは個人次第です。購入すればそれなりにリスクを背負うこと、義務や責任も発生することを忘れてはなりません。

また、空き家問題や住宅の供給過剰問題も年々大きくなってきています。人口や世帯数が減少していく中で、これまでの考え方が通用しなくなるエリアが出てくることにも注意が必要です。


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