自分の収入を見直す
自己資金のチェックが終わったら、次に現在の収入を見直してみましょう。住宅ローンの審査では前年、前々年の年収などの数字を見られますが、より安全な資金計画を考えるなら自分の「安定的な収入」を把握しておくべきです。公務員の人であれば、現在の収入を「安定した収入」とみなしても大丈夫でしょうが、自営の人あるいはそれに近い給与体系の人で「ここ数年は好業績で収入も多かった」というケースは注意しなければなりません。
これからもずっと高収入を維持する自信があればそれはそれで構いませんが、回りの影響や自然環境によって収入が左右される場合や不確定要素が強い場合などには、自分が最低限は得られるであろう収入というものを理解しておきたいところです。
会社員の人でもボーナスが不安定であれば、それを除外して年収を考えるべきでしょう。
また、リストラされたり倒産したりする可能性の高い職場であれば、いざそうなったときに自分がどの程度の収入を確保できるのか、すぐに次の仕事に就く柔軟性が自分にはあるのか、あるいは非常時に際して支払いをカバーできる余力があるのか、などといった面も見直しておきたいところです。
自分が得られる収入の「安定ライン」をベースとして資金計画を練れば、毎月の住宅ローン返済に追われることも少なく、破綻リスクを低減させることもできるでしょう。
毎月の支出限度額を決める
自分の「安定的な収入ライン」を把握したら、次に住居関連費用として毎月支出する金額の上限を決めます。住居関連費用には、住宅ローンの返済額だけでなく、毎年の固定資産税・都市計画税、水道光熱費、駐車場代、マンションであれば管理費や修繕積立金、一戸建て住宅であれば定期的な建物修繕に備えた積み立て費用、さらにマンションか一戸建て住宅かにかかわらず、火災保険料や地震保険料、将来的な室内リフォームに備えた積み立て費用なども含まれます。
これからの家計をじっくりと見つめなおしてみることが大切。家計簿をつけていれば把握しやすい
現在の住まいが賃貸の人はその家賃をベースにして考えることも多いでしょうが、仮に「家賃並みの住宅ローン返済」といってもその中身は人それぞれ異なります。
毎月の家賃を支払いながら十分な預貯金ができている人と、毎月ぎりぎりの生活をしている人では、おのずと大きな違いがあるでしょう。決して「毎月の住宅ローン返済額をいまの家賃並みに抑えれば良い」というものではありません。
支出限度額を決める際には、上で求めた収入の「最低ライン」から、日常の生活費、食費などのほか、子供の養育費、教育関連費用、家族旅行費用、その他将来的に見込まれる出費に備えた預貯金などを差し引いて考えれば良いのですが、実際のところこれがいちばん難しい部分です。
将来的に何が起きるか分からないし、子供が増えるかもしれない。病気で長期療養を余儀なくされる可能性だってある……。そう考えると、収入から差し引く分を多めに、住居関連費用として支出できる「限度額」を少なめに見積もることも必要です。
なお、購入する住宅を夫婦などの共有名義にする場合には、その持分割合もこの段階である程度は決めておきたいところです。その考え方などについては ≪共有名義と共有持分のポイント≫ をご参照ください。
住宅ローンで破綻しないためには……
イザというときに困らないようにするためには、上で求めた自分の「限度額」をできるかぎり守るという意識が大切です。毎月負担する費用の明細は物件ごとに異なりますので、購入物件を絞り込む段階で(住宅ローン返済以外の)各費用の確認や試算をして「限度額」からそれらを差し引けば、残りが住宅ローンの返済に充てることのできる金額となります。
そして、この住宅ローン返済額から逆算した借入れ額と自己資金の合計額よりも、物件価格(+購入諸費用)のほうが安いならばOK、逆に物件価格(+購入諸費用)のほうが高ければその物件はNGです。
綿密な資金計画のもとに住宅購入を考えたいもの。住宅ローンで生活が破綻することだけは避けたい
それが大きくかけ離れていれば諦めも早いのですが、ほんの少しの差だったりすると「食費をちょっと切り詰めれば」「家族旅行を我慢すれば」などとも考えがちです。
しかし、そこで妥協を始めたらきりがありません。上で求めた限度額を「1円たりともオーバーしたら買わない」というぐらいの心構えで購入物件を選択することも必要です。
もちろん、そこまで厳密にしなくても大丈夫でしょうが、無理をしないためには、支払いに少し余裕をみて物件をリストアップすることも大切です。
また、金利上昇リスクも考慮しなくてはなりません。最近では長期固定金利の住宅ローンも増えてきましたが、変動金利で住宅ローンを組む際には、将来の金利上昇で毎月の住宅ローン返済額が増えることも想定して予算を考えるべきです。
さらに、融資実行時の金利も予測しなくてはなりません。民間金融機関では原則として融資実行時に金利が確定します。とくに新築マンションなどで、完成・引き渡しが数か月先、あるいは来年、再来年という場合には、その将来時点の金利が適用されるので十分な注意が必要です。
ただし、民間金融機関でも分譲業者の提携ローンなど、申込み時に適用金利を確定させるケースも増えつつありますから、事前によく確認してみましょう。
自己資金の全額を住宅購入に充てるのではなく、いくらかを手元に残しておくことも大切です。想定外の出費が、いつ、いくら必要になるか分かりませんし、不動産取得税など後日請求される税負担も考えておかなければなりません。
なお、住宅ローン控除の適用によって所得税の還付などが見込まれるとき、この還付金がなければ成り立たないような返済計画は立てないことです。いったんは手元にプールし、ある程度の資金がまとまった段階で繰上返済などを検討しましょう。
【住宅購入の流れ・手順】
1 購入の意思決定
2 資金計画を立てる
3 住宅選びの前準備
4 情報収集・物件見学
5 購入物件の決定
6 売買契約・引き渡し
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