住宅の敷地にとって道路はたいへん重要なものであり、また、問題の生じやすい部分です。今回も道路に関するご質問をいただきました。
(静岡県沼津市 細井道さん 30代 男性)
これがいわゆる敷地の「セットバック」であり、この敷地後退によって建築基準法における道路の原則である「4m以上」の幅員を将来的に確保しようとするものです。
なお、一定の指定を受けた区域内では、前面道路の幅員が6m未満の場合において道路中心線から3mの位置までのセットバックを求められますが、実際にこの指定を受けた例はまだだいぶ少ないでしょう。
道路幅員の基準が4mの場合に話を戻しますが、実務上では前面道路の中心から “ぴったり2m” とはいかないことが多くあり、建築確認申請を出す段階で管轄の役所と協議をしなければ、このセットバック幅や面積が確定できないこともあるので厄介です。
セットバックは単純に「道路の中心から2m」とはいかないことが多い
まずいちばん多いのは、向かい側の敷地がすでにセットバックをしているケースです。
この場合にはセットバックの基準となる前面道路の中心線が、いま現在の中心線ではなく向かい側がセットバックする以前の中心線であり、4mに足りない分はすべてこちら側の敷地で後退をしなければなりません。
ご質問のケースでは、前面道路の幅が3.4mということですから、このケースに該当するとすれば60cmのセットバックが必要です。しかし、建築会社の人の調査結果では40cmから50cmとのことで、何か別の原因がありそうです。
向かい側の敷地がすでにセットバックしている場合でも、中心線から2mのラインまで規定どおりに敷地を後退させないまま、中途半端なセットバックで終わっていることもあります。
たとえば、本来は50cm後退しなければならないのに、40cm程度後退しただけの位置に塀を立ててしまっているような場合です。
このようなケースでは、建築確認申請上では規定どおりに後退するようにしていながら、実際の工事の際に十分なセットバックをしなかったというものが大半でしょう。
また、向かい側の敷地でセットバックをしてから数十年を経ているような場合で、側溝などの工事を何度かやり直すうちに、敷地境界のラインがずれてしまったというケースもあります。
近年の工事ではあまりそのようなことはないでしょうが、工事年月が古く簡易な工事などの場合には、境界ラインの維持が雑だったような事例もあるようです。
向かい側の敷地ですでにセットバックをしているとき、それに合わせて敷地を分筆していればそのズレなども把握しやすいのですが、そうではないときには状況の把握が難しいケースもあって困りものです。
さらに、道路幅員の状態が一様ではないケースもよくありがちです。ある部分では幅が3.4mでも、別の部分で測ると3.6mだったり3.2mだったり、ときには並びの敷地のうち一部分が道路に突出して平面上の段差ができていたり、曲線状になっていたりするケースもあります。
セットバックが必要な狭い道路では、きれいな平行線状になっている道路より、やや不整形な道路のほうが多いでしょう。
不整形な道路で原則どおりのセットバックをして、拡幅後も不整形な状態を残すよりも、できるかぎり整形に近付けたほうが通行のうえでも管理面でも好ましいことはいうまでもありません。当事者の損得の話は別ですが……。
そのため、役所を交えた当事者同士の話し合いで、セットバックの基準となる中心線を定めているケースもあります。このようなとき、現状道路での測定上の中心線と話し合いにより定めた中心線が大きくずれている場合も考えられるのです。
いずれにしても、向かい側の敷地ですでにセットバックしている場合や、別途に中心線を定めている場合には、その線を示すポイント(鋲など)が道路に埋め込んであるケースも多いため、まずこれを探し出すことが必要です。
次に管轄の役所で向かい側の敷地における建築確認申請書の概要を閲覧したり、狭あい道路の整備を担当する窓口で中心線の協議資料を確認したりすることが欠かせません。
これらの調査は当然ながら不動産業者などが行なうものですが、土地の取り扱いに慣れていない業者では調査が不十分な場合も見受けられるようです。
買主としては、セットバックが必要な敷地の場合に、必ずしも現在の道路の中心線から2mとはかぎらないこと、さらに役所などと協議をしたうえでなければセットバックすべき幅や面積が確定しないケースもあることを覚えておいてください。
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