今回は中古マンションを売り出している人からのご質問ですが、これから購入しようとする人にも参考になるでしょう。



question
自宅マンションを売りに出しているのですが、なかなか希望どおりの買主がみつからずに困っています。初めに不動産業者へ依頼をしたとき、周辺の売買事例もいくつか見せてもらい、相場では3,200万円だという査定だったので、3,180万円で専任媒介契約を締結しました。しかし、3か月経っても売却できなかったので、別の業者に依頼しようとしたところ、ほぼ同じ時期に建てられた隣のマンションのだいたい同じ大きさの部屋が、つい数日前に2,500万円で取引されたばかりであるうえ、別の物件でも2,400万円程度の事例があるため、それ相応に価格を下げなければ売れないといわれました。ほんの数か月で相場が2割も下がることなど本当にあるのでしょうか? それとも私が騙されているのでしょうか?
(神奈川県綾瀬市 KTさん 40代 男性)



answer
中古マンションを売却しようとするとき、それぞれの不動産業者が大きく異なる売買事例を出してきたり、査定価格にかなりの差がみられたりする場合があります。

そのようなときには、一方の業者、あるいは双方の業者とも意図的に事例データを選別している可能性がないともいえません。

高く査定をして、とりあえず媒介契約をとってしまおうとする業者もあれば、安く見積もって売主に諦めさせ、自社で買い取ろうとする業者もあるでしょう。

また、不動産業者の故意ではなくても比較対象物件の選択を間違えたり、査定価格を見誤ったりすることも、十分に考えられます。

マンションの外観

時間の経過で査定が大きく変わることもある!?

物件の詳しい状況が分かりませんので、査定をした不動産業者が間違っているのか、売主を騙そうとしているのか、あるいは別に何らかの原因があるのか、何とも判断できません。

しかし、双方の業者にさほど問題がなくても、ちょっとした時間的なズレで、査定価格に大きな差が出てしまうこともあります。

個別の要素が大きい土地や一戸建て住宅の場合は、周辺の単発事例に大きく左右されることはありませんが、マンションの場合は類似物件との比較がしやすい反面で、ある事情が重なったときに価格面で大きな影響を受けてしまう弊害も生じやすいのです。

中古マンションの価格相場に影響を及ぼす要因として、まず考えられるのは、同じマンションの他の部屋の所有者、あるいは近隣の類似するマンションの所有者が、何らかの事情で通常よりも安く売却した場合です。

住宅ローンの返済が滞ったり、税金の滞納が続いたりしたときには、最終的に不動産競売で処分されることになりますが、競売の前の段階で任意売却がされるケースもあります。また、任意売却ではなくても所有者が売り急ぐ何らかの事情で安く売却されることがあるでしょう。

通常よりもかなり安値での売却のとき、売主から依頼を受けた不動産業者が手馴れたところであれば、物件情報をおおやけにすることなく速やかに契約をまとめ上げます。

ところが、不慣れな業者が依頼を受けてしまうと、相場とかけ離れた価格のままで物件情報をレインズなどへ登録してしまうことがあるのです。

専任媒介契約や専属専任媒介契約で売却の依頼を受ければ、物件情報をレインズなどへ登録することが法的に義務付けられているのですが、慣れた業者であれば登録義務のない一般媒介契約で依頼を受けたり、専任媒介契約などの場合でも登録期限が来る前に契約をまとめてしまったり、ときには媒介契約そのものを締結する前に買主を見つけたりするわけです。

それはともかくとして、通常の相場よりも格安の価格でレインズなどに登録されると、それをみた別の不動産業者が少しでも早く媒介手数料を稼ごうとして、チラシなどをばら撒いてしまうことがあります。

売買事例が豊富なマンションあるいはエリアであれば、そのような単発の事例で価格が大きく左右されることはないのですが、売出し事例や成約事例が極めて少ないところでは、いったん格安の事例が報告されると、次に売ろうとする人は大きな影響を受けることになります。

目の前の事例が本来の価格なのか何らかの事情を抱えた安い価格なのかが判断できなくても、比較するマンションが他になければそれを参考にせざるを得ないでしょう。

郊外のマンション

売買事例が少ない郊外のマンションなどでは、ひとつの事例が大きく影響を及ぼすこともある

部屋のなかで自殺などがあったりすると、それを処分するときには相場よりもかなり低い価格にせざるを得ませんが、これがそのまま売出し事例や成約事例として記録や報告がされてしまったときにも問題が生じやすくなります。

なぜそのような低い価格だったのかは、事例データのなかに明記されませんから、事情を知らない人がみれば「その程度のマンションなのか」と判断しないともかぎりません。

同様のことは競売物件でも起こりがちです。たとえば、通常の相場が3,000万円、不動産競売による売却基準価額が2,100万円、実際に落札された価額が2,800万円だったとしましょう。

このときに近隣の人たちの間で噂になるのは、落札された2,800万円ではなく2,100万円のほうです。実際に取引された価額ではない売却基準価額がひとり歩きを始めてしまい、その周辺での売買事例が少なければ影響を受ける度合いも強くなりかねません。

つまり、比較検討すべき売買事例が極端に少ないエリアで、何らかの事情で格安に売却される物件があり、それが一般の人にも知れ渡ったとき(あるいは数少ない売買事例として記録や報告がされてしまったとき)に、「本来の相場」から急に値下がりすることもあり得るわけです。

もっとも、売買事例が極端に少なければ「本来の相場」自体がはっきりしないのですが……。

そして、格安の売買事例だけをみて弱気になった次の売主が、仕方なく自分のところも安く手放そうとすると、その周辺で安い事例だけが蓄積されて、エリア全体の相場を引き下げることにもなるのです。

また、個々の売買事例による影響ではなくても、マンションの欠陥などが明らかになったり、周辺の環境を悪化させるような施設が新しくできてしまったり、あるいは報道などによる何らかの風評被害を受けたりして、そのマンション全体や、そのエリア全体の相場を引き下げる要因が生まれてしまうこともあるでしょう。

不動産業者から提示された売買事例の数があまりにも少なければ、その査定価格などが適正なのかどうか、複数の第三者の意見を聞いてみることも必要です。

なお、インターネットによる情報の公開や蓄積も年々進んできているため、単発の事例によってマンションの価格相場が大きく左右されるケースは次第に少なくなっていくと考えられます。


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