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不動産業者へ支払う仲介手数料の基礎知識(2ページ目)

仲介手数料は売買契約にかかる諸費用のうちで多くを占めるため、その基本的な仕組みをよく理解しておきたいものです。意外と知られていない部分も多いため、仲介手数料の基礎知識を学んでおきましょう。(2017年改訂版、初出:2006年7月)

執筆者:平野 雅之


仲介手数料をいつ支払う?

売買契約締結時と決済時にそれぞれ仲介手数料の半分(半金)ずつを支払うパターンが多く、決済時に全額を支払うケースもあります。

ただし、売買契約が停止条件付きの場合には、契約締結時点では契約が有効に成立していませんから、仲介手数料の半金を支払うのはその条件がクリアされてからということになります。

買主または売主があらかじめ承諾すれば、売買契約締結時に仲介手数料の全額を支払うこともありますが、これは違反とはいえないものの行政側の指導内容には反することです。決済時までの仲介業者の業務遂行を担保する意味でも、そのような要求には応じないほうが賢明でしょう。

ちなみに国土交通省は、旧建設省時代に「契約が成立した際に半額、媒介などの責任を完了したときに残額」を受領するよう、不動産業者に対する指導をしています。

ただし、売買契約の締結と同時に売買代金の全額を支払う「一括決済」の場合には、仲介手数料も同様に全額をまとめて支払わなければなりません。

なお、以前は売買契約を締結するとき、買主に仲介手数料の「支払い約定書」を書いてもらう不動産業者も多かったのですが、行政側の指導などもあり、最近では売買契約締結前の段階において買主との間で「媒介契約書」を交わし、その中で仲介手数料の額と支払い時期とを明確にするようになっています。

そのため「支払い約定書」をいただく不動産業者は、次第に少なくなっていることでしょう。


仲介手数料以外の費用を請求されることがある?

買主が仲介手数料以外の費用を不動産業者から請求されるケースはあまり考えられませんが、売主であれば「特別に依頼した広告の費用」や「遠隔地への出張旅費」などの “実費” を請求されることがあります。この場合は、売買契約が成立しなくても支払わなければなりません。

「特別に依頼した広告」とは、仲介業者が実施する通常の広告の範囲を超えて、その物件単独で特別な折込み広告や新聞紙面への広告など(個人でテレビCMを依頼することはあり得ないでしょうが……)をした場合です。

あくまでも「売主からの依頼」が前提であり、業者が事前の承諾もなく勝手にやったのであれば支払い義務はありません。

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遠隔地への出張が必要な契約なら、手数料以外に費用が発生することも

「遠隔地への出張旅費」とは、売却を依頼された物件が通常の営業範囲を超えて相当な遠隔地だった場合や、遠隔地に住む共有者の承諾を得るために出張した場合などが該当します。

ただし、これも出張回数などを勘案して事前に売主が承諾した範囲内の金額が認められると考えるべきで、遠隔地だからといって必要以上に出張を重ねるような費用は認められないでしょう。

また、仲介手数料とは別に「住宅ローン申込み代行料」などの名目で買主から手数料(金融機関や保証会社の手数料とも異なります)を徴収しようとする不動産業者もあるようです。とくに地方圏では、仲介手数料の金額が相対的に低いためにそのような手法が広がったのでしょうか?

本来なら住宅ローン申込み手続きの補助や代行も一連の媒介業務の中に含まれるものと考えられるケースが大半で、仲介手数料とは別に「住宅ローン申込み代行料」や「住宅ローン取扱い手数料」などを請求することは好ましくないでしょう。

しかし、明確な禁止規定がないためにその判断が難しいところです。

ちなみに、宅地建物取引業法では “不当に高額な” 報酬の要求を禁止していますが、媒介報酬以外の部分に関する「低額な報酬」についてはあいまいです。また、国土交通省による標準媒介契約約款では住宅ローン申込みに関連する業務についての言及がありません。

なお、大手業者などでも上限額いっぱいの仲介手数料をいただいたうえで、それとは別に「住宅ローン申込み代行手数料」などを買主に請求しているところがあるようです。

仲介手数料を上限額から大幅に引き下げている場合はともかくとして、100万円を超えるような仲介手数料に数万円の代行手数料を上乗せしても、買主からの信頼を損なうだけで長期的にみれば何ら実利はないでしょうが……。

ただし、新築分譲マンションなどの場合には、仲介手数料がない代わりに提携ローンの斡旋手数料を頂戴しているデベロッパー(もしくはその販売代理業者)も多いようです。


売買契約が解除された場合は?

住宅ローン利用の特約(融資利用の特約)や買換え特約などの解除条件によって売買契約が白紙解除された場合、または停止条件が成就せずに売買契約が有効に成立しなかった場合には、売主も買主も仲介手数料を支払う必要がありません。

その際に、先に支払った仲介手数料の半金などがあれば、返還してもらうことができます。

問題となるのは手付放棄や手付倍返しによる「手付解除」や、債務不履行など違約による解除、瑕疵担保責任による解除、売主と買主の合意による白紙解除(特約以外の事由による解除)などの場合です。

売主と買主のうちどちらか一方の都合、または双方の都合によって、いったんは有効に成立した売買契約が解除されたとき、そこへ至るまでの過程で仲介業者にまったく落度がなければ仲介手数料を請求することができ、仲介業者にその原因となる調査不足や説明不足、不適切な契約誘引行為などがあれば仲介手数料も請求できない、とするのが一般的です。

しかし、実際に契約解除を伴う問題が生じたとき、売主(または買主)と仲介業者の「どちらか一方だけが100%悪い」とはあまりならないでしょう。

仲介業者に何らかのミスがあったとしても、その事実や因果関係を立証することは容易ではありませんから、いざトラブルになればどんどんと厄介な事態へと進んでしまいます。

裁判での判例などをみても、個々の事件が抱える事情によって対応がさまざまに分かれているようで、一様に判断をすることができない非常に難しい問題です。

もっとも、面倒なトラブルへ発展することを避けるため、たとえ業務上の不備がなくても、契約解除についてやむを得ない事情があれば仲介手数料の請求を諦めたり、手付解除の場合なら金銭を受け取った側(解除された側)から少しだけ手数料を頂戴したりして終わりにする仲介業者も多いようです。

ただし、状況によってはペナルティ的な意味合いで、金銭を支払った側(解除した側)に相当額を請求することもあり得るでしょう。

これから住宅を購入しようとする場合には、契約を締結した後で「やっぱりやめたい」などということがないように、安易な契約を避けるとともに、仲介業者から契約をせかされても簡単には妥協しない慎重さが大切です。


仲介業者を外して売主と直接取引をしたら?

不動産業者の媒介行為によって売買契約締結に向けた話がまとまった後(あるいはお互いの紹介を受けた後)、仲介手数料の支払いを逃れるために売主と買主が直接に連絡を取り合って、自分たちだけで売買契約を締結した場合はどうでしょうか?

このようなケースでも不動産業者は(全額かどうかは別として)仲介手数料を請求できることになっています。手数料以外の面を考えてもトラブルは必至ですから、そうする意図があるのであれば、初めから不動産業者に依頼をするべきではありません。

不動産業者を騙そうとして、半年後とか1年後まで契約締結を待ってみても、たいていは発覚してしまうものです。


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