世界遺産/アメリカの世界遺産

ティカル国立公園/グアテマラ(4ページ目)

サルや野鳥の鳴き声が響き渡るジャングルに突き出した、中米一の高さを誇るピラミッド群。今回は、ジャングルとマヤ文明が融合した、世界有数の複合遺産「ティカル国立公園」へご案内しよう。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

ティカルとピラミッドとマヤの宇宙観

タルー・タブレロ型神殿。タルー(傾斜面)とタブレロ(垂直面)を重ねたピラミッドは、テオティワカンのピラミッドにそっくり ©牧哲雄

タルー・タブレロ型神殿。タルー(傾斜面)とタブレロ(垂直面)を重ねたピラミッドは、テオティワカンのピラミッドにそっくり ©牧哲雄

ティカルは3,000とも4,000ともいわれる遺跡からなる古代都市で、石灰岩を敷き詰めたプラット・フォームに都市が整備された。岩を切り出した場所は池となり、この水を水源に、最大5万とも10万ともいう人口をまかなった。

メインはグラン・プラザ(中央広場)周辺で、広場を中心に、神殿や墓地のあるノース・アクロポリス、主に住居や宮殿として使われていた中央アクロポリス、そしてふたつのピラミッド=I号神殿とII号神殿が向かい合って並んでいる。

I号神殿の背面

I号神殿の背面 ©牧哲雄

I号神殿(大ジャガー神殿)は9層からなっている。マヤでは、天・地上・地下と世界は3層からなり、地下の冥界は9層からなると信じられていた。ピラミッド頂上の屋根飾りの穴は洞窟を表現しており、この穴が冥界への通路になっていたと思われる。I号神殿にはア・カカウと呼ばれる王の墓があり、神殿は王墓でもあったといわれているが、II号神殿(仮面神殿)をはじめ王墓が見つかっていない神殿もあり、謎は解けていない。

いずれにせよピラミッドは天・地・冥界を結ぶ聖なる山の象徴で、この点はアンコールワットやボロブドゥールなど、仏教やヒンドゥー教の多くの寺院が須弥山を模しているのと同様だ。また、セイバと呼ばれる木が天・地・冥界を結んでいる宇宙樹だと信仰されていた。

この宇宙三層構造、聖山、宇宙樹という考え方は、実は世界中いたるところで見ることができる。空の向こうには何があるのか? 地の下はいったいどうなっているのか? 原因と結果を結びつける人間の思考が、自然とこのような信仰を生み出したのだろう。 
  • 前のページへ
  • 1
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます