日本は、もっと日本のよさを教える教育を学校ですべき
小学校の発表会。フィリップス先生のクラスが合唱などを披露。全校一斉の会ではなく、集まって、先生が親たちを招待して自主的に開催するというところが特徴。先生が熱心かどうかによって、子供たちのイベントの数も左右されるのがアメリカの教育です。 |
Q.井上さんが日本の教育の現状をアメリカと比較して、もっとこうした方がいいのになと思われる点を教えてください。
また、逆にアメリカと比べて、日本の教育が優れていると思われる点を教えてください。
A.日本は、もっと日本のよさを教える教育を学校ですべきだと感じています。アメリカ人はよく独善的で、アメリカが一番良い国だと思っていると批判されますが、「自分の国がそこまですきだなんてうらやましい」と思うことが多かったからです。
日本には、欧米よりもいいことがいっぱいあります。サービス産業、製造業の質の高さは世界一です。社会保障の仕組みも、公的医療保険、公的年金がここまで整備されている国は少ないです。とくに医療保険は、低所得者と高齢者向けにしか公的保険がないアメリカに比べたら、日本はすばらしい制度を持っています。
そういう日本のすばらしさを、もっともっと子どもに教えたいと思います。そして、「よりよい国にするにはどうすればいいかをみんなで考えましょう」というほうが建設的な教育だと思います。日本人は、すぐに自虐的に「日本ってだめや」と言ってしまいます。国民性だといえばそれまでですが、教育も関係しているのではないかと思っています。
算数の基礎教育に関していえば、日本のほうがシステム化されていて、単純で子どもにとってわかりやすいと思います。アメリカの小学校は、独創性をつぶさない教育に重きをおいているからなのか、ペンギンの生態教育と算数を一緒に教え、それを描いて美術教育にも役立てるということがありました。それはそれで楽しかったようですが、英語にハンデがあるうちの子は、少し混乱していました。
アメリカでは「算数きらいやった」と話していた上の子が、帰国して1年半たって「いまは好きやで」と言います。うちの子はやっぱり日本人だから、日本式の教え方が合うのかもしれません。日米の教育のどちらがいいというよりは、個々の子どもの向き不向きの問題もあるかもしれません。
半面、アメリカの独創的な教育のお陰か、上の子は美術がとても得意になりました。固定概念にしばられない発想をすることがあります。アメリカの教育の影響があるのかもしれません。もって生まれた子どもの特質もあるので、一概には言いにくいところですが。