フレンチ/東京のレストラン

対談 ~シュマン~(2ページ目)

「シュマン」の小玉シェフとの対談記事です。シェフが料理をはじめたきっかけや、普段は聞けない裏話などを、こと細かくご紹介します!

執筆者:来栖 けい


オマール海老とホタテのムースを詰めたブレス産仔鳩のロースト、2つの味わいのソース(ぷるぷるの仔鳩)!

来栖:ボクは仔鳩が好きなのでいつも頼むんですが、この間「ぷるぷるの仔鳩」作っていただきましたよね。あれは美味しかったなー。ぷるぷるぷるぷる揺れているんですよ、運んでくる時に。

小玉:中にオマール海老のムースを詰めたものですね。

来栖:そう。あれは、実際のところは他の仔鳩とやわらかさは同じだと思うんですけど、視覚からの影響でよりやわらかく感じてしまうんですよね。

小玉:あれは、1回しか作ってないんです。普段はできないです。鳩一羽で、中にぎっしりムースが入っているので、ポーション的な問題もあります。鳩の中に詰め物という珍しい調理法でもあり、なかなかメニューに載せられないんです。難しいんですよ、あれは。

来栖:詰め物をするから難しい?

小玉:鳩に詰め物をするのは難しいですね。

来栖:うずらなんかとは違うんですか?

小玉:うずらはクリスピー感がおいしいんですが、鳩はクリスピー感もあって、胸肉はロゼで、詰め物も温かく仕上げるのが難しいんです。一から作るとしたら、できないですよ。ムースに火が入るより、胸肉に火が通る方が早いじゃないですか。あれは、ムースをラップに包んで一度火を入れてるんですよ。それを中に詰めて、じっくりと焼き上げたんです。

来栖:あ、なるほど。今気づきました。

小玉:どうしようかな、と考えたんですよ。ムースを入れてしまうと、胸肉にも火が入ってしまう。考えた末に、先に温めておく方式にしました。だから、ほわっとした感じになっていたんです。

シェフも大の仔鳩好き!

ヴァローナショコラ(グアナラ70%・ジャンドゥーヤ・アラグアニ72%)のガトー、コニャックのアイスクリーム
ショコラとバナナを組み合わせた「ヴァローナショコラ(グアナラ70%・ジャンドゥーヤ・アラグアニ72%)のガトー、コニャックのアイスクリーム」。
来栖:シェフも仔鳩がいちばん好きな食材なんですよね?

小玉:やっぱり仔鳩は特別ですね。絶対一羽食べたいです。

来栖:他のメニューが変わっても、仔鳩だけは変わりませんもんね。ボクたち好きなものが似てますよね~(笑)。他にもバナナとかショコラとか。

小玉:練乳なんかもね(笑)。やっぱりいろんなお店がある中で、好き嫌いって出て当たり前だと思います。相性ですね。


これまでの概念を覆されるブーダンノワール!

ブーダンノワールのカリカリポテト包み、バニュルスキャラメルとリンゴのピューレ
「ブーダンノワールのカリカリポテト包み、バニュルスキャラメルとリンゴのピューレ」。仔鳩料理と並ぶ小玉シェフのスペシャリテです。
来栖:あ、仔鳩もそうなんですけど、前菜のブーダンノワールも外せないですよね。ブーダンって、受けつけない人も多いじゃないですか。でも一度食べたらやめられないですもんね。この間連れてきた人も、ブーダン苦手だったんですが、ここのを食べてビックリしていましたからね。じゃがいものパリッとした食感ともすごく合うし。

小玉:じゃがいもがパリッとしない時期もあるんですよ。五~六月はたいへんです。じゃがいもが甘みを持つと酵母が多くなり、揚げるとすぐ色がついちゃうんです。糖分やでんぷん質が多いと、よく水にさらして抜くんですが、カリッと揚げられなくなってしまう。

来栖:ブーダンをじゃがいもを巻くっていうのは、シェフのオリジナルですよね。

小玉:前々からブーダンに合うものを探していたんですよ。以前働いていたお店で身につけたものと、フランスで学んだことをコラボレートして新しいものを作りたいな、と思っていました。以前働いていた店で、フォワグラをカットして丸めてじゃがいもで巻いて、という料理があって、実際作っていたんですが、ちょっと脂っこいんですよ。なんか違う方がいいんじゃないかな、と思ってました。

来栖:それの応用なんですね。ここのブーダン食べて思うのは、「脂」と「油」なのに、あの軽快さはスゴイな、と。じゃがいもの食感はもちろんのこと、あのバランスが素晴らしい! あれはもう完全にお店の定番になっていますよね。

小玉:ここだけの話、あの料理は「シュマン」が始まる前から定番にしたい、という思い入れがあったんです。脂なので揚げるとどうかな?と思ってはいたんですが。

来栖:美味しくなければ、注文がなければ、定番になりませんからね。

小玉:そうなんです。お店をやりたいな、と思った時には、すでに頭にありましたね。

来栖:普通にア・ラ・カルトで頼むと3つ盛られてきますが、他のものもいろいろ食べたい場合には、1個だけでお願いすることもできるんですよね。これは特に女性にはうれしいでしょうね。

小玉:はい。それとは逆に、1回に5つ頼まれた方もいらっしゃいましたよ。

来栖:メインで?

小玉:そうです。夢に出てくるだよー、とおっしゃってましたね(笑)。

来栖:メインにもなりますよね、あれは。

小玉:はい。フォークでさして、ひとくちで食べる方もいらっしゃいましたね。

来栖:ひとくちで? 今度やろうっと(笑)。


次ページは、小玉シェフが最も得意とする肉料理の極意について。
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