オマール海老とホタテのムースを詰めたブレス産仔鳩のロースト、2つの味わいのソース(ぷるぷるの仔鳩)!
来栖:ボクは仔鳩が好きなのでいつも頼むんですが、この間「ぷるぷるの仔鳩」作っていただきましたよね。あれは美味しかったなー。ぷるぷるぷるぷる揺れているんですよ、運んでくる時に。小玉:中にオマール海老のムースを詰めたものですね。
来栖:そう。あれは、実際のところは他の仔鳩とやわらかさは同じだと思うんですけど、視覚からの影響でよりやわらかく感じてしまうんですよね。
小玉:あれは、1回しか作ってないんです。普段はできないです。鳩一羽で、中にぎっしりムースが入っているので、ポーション的な問題もあります。鳩の中に詰め物という珍しい調理法でもあり、なかなかメニューに載せられないんです。難しいんですよ、あれは。
来栖:詰め物をするから難しい?
小玉:鳩に詰め物をするのは難しいですね。
来栖:うずらなんかとは違うんですか?
小玉:うずらはクリスピー感がおいしいんですが、鳩はクリスピー感もあって、胸肉はロゼで、詰め物も温かく仕上げるのが難しいんです。一から作るとしたら、できないですよ。ムースに火が入るより、胸肉に火が通る方が早いじゃないですか。あれは、ムースをラップに包んで一度火を入れてるんですよ。それを中に詰めて、じっくりと焼き上げたんです。
来栖:あ、なるほど。今気づきました。
小玉:どうしようかな、と考えたんですよ。ムースを入れてしまうと、胸肉にも火が入ってしまう。考えた末に、先に温めておく方式にしました。だから、ほわっとした感じになっていたんです。
シェフも大の仔鳩好き!
ショコラとバナナを組み合わせた「ヴァローナショコラ(グアナラ70%・ジャンドゥーヤ・アラグアニ72%)のガトー、コニャックのアイスクリーム」。 |
小玉:やっぱり仔鳩は特別ですね。絶対一羽食べたいです。
来栖:他のメニューが変わっても、仔鳩だけは変わりませんもんね。ボクたち好きなものが似てますよね~(笑)。他にもバナナとかショコラとか。
小玉:練乳なんかもね(笑)。やっぱりいろんなお店がある中で、好き嫌いって出て当たり前だと思います。相性ですね。
これまでの概念を覆されるブーダンノワール!
「ブーダンノワールのカリカリポテト包み、バニュルスキャラメルとリンゴのピューレ」。仔鳩料理と並ぶ小玉シェフのスペシャリテです。 |
小玉:じゃがいもがパリッとしない時期もあるんですよ。五~六月はたいへんです。じゃがいもが甘みを持つと酵母が多くなり、揚げるとすぐ色がついちゃうんです。糖分やでんぷん質が多いと、よく水にさらして抜くんですが、カリッと揚げられなくなってしまう。
来栖:ブーダンをじゃがいもを巻くっていうのは、シェフのオリジナルですよね。
小玉:前々からブーダンに合うものを探していたんですよ。以前働いていたお店で身につけたものと、フランスで学んだことをコラボレートして新しいものを作りたいな、と思っていました。以前働いていた店で、フォワグラをカットして丸めてじゃがいもで巻いて、という料理があって、実際作っていたんですが、ちょっと脂っこいんですよ。なんか違う方がいいんじゃないかな、と思ってました。
来栖:それの応用なんですね。ここのブーダン食べて思うのは、「脂」と「油」なのに、あの軽快さはスゴイな、と。じゃがいもの食感はもちろんのこと、あのバランスが素晴らしい! あれはもう完全にお店の定番になっていますよね。
小玉:ここだけの話、あの料理は「シュマン」が始まる前から定番にしたい、という思い入れがあったんです。脂なので揚げるとどうかな?と思ってはいたんですが。
来栖:美味しくなければ、注文がなければ、定番になりませんからね。
小玉:そうなんです。お店をやりたいな、と思った時には、すでに頭にありましたね。
来栖:普通にア・ラ・カルトで頼むと3つ盛られてきますが、他のものもいろいろ食べたい場合には、1個だけでお願いすることもできるんですよね。これは特に女性にはうれしいでしょうね。
小玉:はい。それとは逆に、1回に5つ頼まれた方もいらっしゃいましたよ。
来栖:メインで?
小玉:そうです。夢に出てくるだよー、とおっしゃってましたね(笑)。
来栖:メインにもなりますよね、あれは。
小玉:はい。フォークでさして、ひとくちで食べる方もいらっしゃいましたね。
来栖:ひとくちで? 今度やろうっと(笑)。
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