和のトライアングル
風情ある路地に佇んでいる | 暖簾はためく入口 |
旬の食材を活かした料理世界
料理長の難波 修さん |
難波さん曰く、「煮物と八寸と器でできるだけ季節感を出すことに腐心してます」とのことで、今回に御紹介する御料理も「秋」という季節を料理と器で色鮮やかに表現されてます。というにのも、難波さんはお茶を15年以上やっておられていただけあり、器にも造詣が深く、渋い骨董を中心に、現代作家ものも使い分けたりと、料理とのマリアージュを考慮された素晴らしいセンスの持ち主なのです。詳しくは料理解説の時に記述していきますが、とにかく圧倒的な美味しさと美しさで、味覚だけではなく、視覚的にも愉しませてくれる料理の数々は、「招福楼」系ならではの宝技。
味も見た目も美しい料理達
今回は驚異のコストパフォーマンスを誇る昼の5,000円コースから料理を御紹介。内容は全部で8皿。松茸、名残鱧などの高級食材と、手の込んだ豪華な八寸に2種類の水菓子等の内容で5,000円ですから、祇園とは思えない超お値打ちぶり。ご主人曰く「昼は原価を考えずに作ってます」とのことですが、本当に申し訳なるぐらい極上の内容となっています。秋の季節の今、これは必食でしょう。・先付け
ワタリガニと柿膾(かきなます)の白酢和え |
一品目から、これだけ手の込んだ丁寧で美しい料理が供されたこともあり、以後の料理に期待は膨らむばかり。難波さんが魅せる感激もののコースの始まりです。
・椀物
鱚の葛タタキと汲み上げ湯葉の葛豆腐による椀物 |
椀に鼻を近づけると柚子の香りが香り立ち、一口、口に入れると、そこから清流のような静かなトーンの出汁を基調に、鱚の旨味エキスが醸し出す薫香が漂い始める。味わいも奥深く、端整の取れたバランス感と、完成度の高い味わいを魅せつけ、最後の一滴を飲み干すまで、会話が止まったほど。ワインと同じように、椀物の出汁というのは、優れた一流の料理人の手にかかると、格段にグレードが上がり、まさに芸術の域となることを改めて実感しましたね。
・向附
名残鱧の焼き霜と鯛、剣先烏賊の3種盛り |
・八寸
秋の彩り溢れる八寸 |
さて、八寸の内容ですが、「とんぶりと鶉の温泉卵の菊花和え」、「筋子スダチ釜」、「鯛の手鞠鮨」、「子持ち鮎の煮物」、「松茸とほうれん草のおしたし」、「紫頭巾」、「栗の甘煮」の合計7種類盛りとなっています。
自家製で醤油漬けした筋子はスダチを釜に見立てているため、ほんのりとスダチ香を纏うワンポイント。また、同じように「松茸とほうれん草のおしたし」も、レモンを入れものにすることで酸味を効かせてあったりと、どれも緻密で妥協のない調理スタイルで、旬を活かしきった完璧な料理世界を作り上げています。
次ページでは、コース後半の料理達を御紹介します