セクシュアルマイノリティ・同性愛/映画・ブックレビュー

伏見さんの小説単行本『団地の女学生』

文藝賞作品『魔女の息子』に続く、伏見憲明さんの受賞後第一作(7年ぶり)となる単行本『団地の女学生』が集英社から発売されました。『団地の女学生』『爪を噛む女』の2作品が収められています。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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2003年に文藝賞の栄誉に輝いた小説『魔女の息子』(河出書房新社)に続き、伏見憲明さんが2008年に『すばる』誌上で発表した中編小説『団地の女学生』、2009年に同誌上で発表した『桜草団地一街区 爪を噛む女』の2作品を収めた単行本『団地の女学生』(集英社)が発売されました。

『じりラブ』と同じく集英社というメジャーな出版社から伏見さんの小説単行本が発売されたことを心からお慶びしつつ、日本を代表するゲイライターである伏見さんの略歴を振り返りつつ、評論やエッセイを書いていた伏見さんが「どうしても小説という形で表現したかったもの」についてゴトウなりに考え、ご紹介してみたいと思います。

伏見憲明公式サイト
http://www.pot.co.jp/fushimi/

伏見憲明さんの輝かしい功績


ゲイという[経験] 増補版
『ゲイという[経験] 増補版』伏見憲明/ポット出版/3675円
デビュー作『プライベート・ゲイ・ライフ』から最新連載『曲がり角を過ぎても』までを収め、これ一冊でゲイについてのすべてがわかるような、伏見さんの自伝のような、世紀の大作。
伏見さんは1991年に『プライベート・ゲイ・ライフ』でカミングアウトし、ゲイライターとしてデビューして以来、メディアにも盛んに取り上げられ、90年代ゲイブームの旗手となり、その後も『スーパーラヴ!』『キャンピィ感覚』(マガジンハウス)、『〈性〉のミステリー』(講談社)、フォトエッセイ集『ゲイ・スタイル』(河出文庫)、『性の倫理学』(朝日新聞社)、『さびしさの授業』『男子のための恋愛検定』(理論社)、『同性愛入門[ゲイ編]』『ゲイという[経験]増補版』『性という[饗宴]』『欲望問題』(ポット出版)などの著作を続々と発表し、『AERA』誌の「21世紀の30代50人」に選出されるなど、ジェンダー/セクシュアリティに関する第一人者として世間にも認められている「知の巨人」です。

『プライベート・ゲイ・ライフ』ではその後のジェンダー/セクシュアリティ論の基礎となる枠組みを提出し(今大学で教えられているジェンダー論なども、この考えがベースになっています)、『クィア・パラダイス』(翔泳社)(その後、『変態〈クィア〉入門』としてちくま文庫に入っています)ではトランスジェンダーやインターセックスなどの方たちとの対話を通じて多様なジェンダー/セクシュアリティを示し、『クィア・ジャパン』シリーズ(勁草書房)ではゲイの老後やサラリーマン、コミュニティ論、運動論などを取り上げ、『バディ』誌上でも日本のゲイの歴史を探る連載や今現在のゲイシーンにコミットするようなエッセイを発表してきました。ゲイにとって重要なことはすべて語り尽くしてきたと思えるほどです。

伏見さんは、世間の人たちがゲイへの理解や共感を深めるような著作を量産してきた一方で、パレードなどゲイコミュニティのムーブメントも強力にバックアップしてきました。世間とゲイの間に立ちはだかる「壁」をブルドーザーのようなパワーで打ち砕き、道を切り開き、光を灯し、今の僕らの生きやすさへとつながるような素晴らしい貢献をしてきた方なのです(とても足を向けて寝られません)
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