ハーヴェイ・ミルクというと政治家のイメージが強いですが、どこにでもいる一人のゲイの生き様を描いた作品でもあり、ミルクと彼氏との愛の物語でもあり、誰でもが楽しめるエンターテインメント作品になっています。
オスカーにも輝いた話題作を、一人のゲイの「愛」と「生」と「死」という切り口でお伝えしてみたいと思います。
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「愛」~ハーヴェイと愛し合った男たち
若き日のハーヴェイとスコットは本当に幸せそう |
主演のショーン・ペンは(かつてマドンナと結婚していたバリバリのストレートであるにも関わらず)、この映画の成功のために、自ら提案してスコットとのラブシーンを演じたそうです。この美しく、リアルなシーンのおかげで、二人がどこにでもいるゲイのカップルで、幸せいっぱいで、希望に満ちていたことが鮮やかに伝わってきます。
セクシーで、純粋で、忠実にハーヴェイを支えてきたスコット。でも、二度の選挙で文字通り「女房役」に徹し、ボロボロになります。もしあの時代(闘いの季節)じゃなかったら、きっと二人は幸せに暮らしつづけることができたでしょう…。本当にせつなく、胸が痛みます。
そして、不意にハーヴェイの前に現れたジャックが、新しい彼氏になります。ジャックは確かに魅力的だけど、少し頭と心が弱く、忙しいミルクの足を引っ張ります。だだをこねるジャックにミルクは振り回されっぱなし。そして悲劇が起こるのです…。言葉もないくらい、衝撃でした。
そんな中、スコットは、ちょっと離れたところからいつもハーヴェイを気にかけ、見守っています。そして、ダン・ホワイトの凶弾に倒れる悪夢の日がやってくるわけですが、その前夜、ハーヴェイはスコットに電話をかけます。ひとことひとことの静かな語りの中に、ハーヴェイとスコットの絆が、おたがいを思う気持ちがにじみ出ています。このシーンがあったからこそ、観終わった後の感動が生きるのです。
30年前のゲイカップルの愛のカタチは、今の僕らのそれと何ら変わりません。だからこそ、『ミルク』は広く共感を呼ぶ映画になったのです。
スコットは本当はずっとハーヴェイのことを…。ハンカチを用意して観てください |