ヴィクトリア女王のウェディングドレス
衣装のサンディ・パウエルは「恋におちたシェイクスピア」、「アビエイター」でアカデミー賞を受賞。本作でもゴールデングローブ賞にノミネートされています。(C)2008 GK Films,LLC All Rights Reserved |
そのドレスにはイギリス・デボンシャー州のホニトンレースや、スピタルフィールズのシルクが使われ、ドレスと同じく美しいホニトンレースが施されたベールは、女王の顔を隠さないようにつけられました。ドレスにもベールにも使われたホニトンレースは当時、ベルギーのブラッセルレースに押されて、大不況の真っ只中。それが女王のウェディングドレスに使用されたことで、ホニトンレース産業は活性化されました。女王が国内産業を救ったのです。またこのベールは結婚式後、家族の重要な行事などで身につけられ、末娘のベアトリスが結婚する際に譲られたそうです。
また女王の頭上には、王冠ではなくオレンジの花でつくられた花飾りがヘッドドレスとして飾られました。ゴージャスでありつつも、若い女王によく似合う可憐な装いは、新聞を通じてセンセーショナルに伝えられました。女王が好きな人と結婚できたこと、これまでの王室のウェディングドレスとは違った装いで結婚式に臨まれたこと、もちろんドレスの詳細まで伝えられ、結婚式の翌日のタイムズ紙は通常の約4倍も売れたそうです。これはもう影響を与えない訳がありません。ヴィクトリア女王の白いウェディングドレスは、大衆にも広がり、今やウェディングドレス=白という定義は、当たり前のものになっています。
1820年代からアッパー層でウェディングドレスは白、と少しずつ認識されはじめてはいましたが、イギリスの花嫁スタイルとして定着させたのは、間違いなくヴィクトリア女王でした。注目度が高いイギリス王室の結婚式だったことはもちろん、若いヴィクトリア女王とアルバート公のロマンス、新聞の飛躍的な発展など、白いウェディングドレスが広まった要因はいろいろあります。でもそんな背景だけでなく、仲むつまじいヴィクトリア女王夫妻にあやかって…ということも、白いウェディングドレスが広まり、定着した所以ではないでしょうか。