暮らしの歳時記/正月の行事・楽しみ方(年末年始)

年明けうどんとは?意味・由来、多彩なレシピや提供店

年明けうどんとは、どんなものでしょう? 由来・意味とともに、年越しそばとの比較、発祥地香川のうどん事情、多彩なレシピ、提供店や「どん兵衛年明けうどん」などについてご紹介します。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

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年明けうどんとは? 意味・由来、多彩なレシピや提供店

どんぶりと麺、初日の出に粉・水・塩を盛り込んだロゴマーク。題字は、中国からうどんを伝えた弘法大師空海の生誕地である総本山善通寺の法主・樫原禅澄大僧正の筆によるもの。

どんぶりと麺、初日の出に粉・水・塩を盛り込んだ年明けうどんのロゴマーク。題字は、中国からうどんを伝えた弘法大師空海の生誕地である総本山善通寺の法主・樫原禅澄大僧正の筆によるもの


「明けましておめでとう」
「もう、うどん食べた?」
「もちろん。年明けうどんを食べなきゃ始まらないでしょ」

……将来、そんな会話が交わされるかもしれません!?
 
<目次>
 

年明けうどんとは? 意味・由来

「年明けうどん」というネーミングから、年明けに食べるうどんのことだと察しはつきますが、冗談だと思う方も多いでしょう。

いえいえ、そんなことはありません。香川の「さぬきうどん振興協議会」が2008年8月に商標登録申請を行い、全国的に広げようと提唱しています(※商標登録申請は、台湾におけるさぬきうどんの商標問題のような事例が起こらないよう、事前に防護しておこうというもので、この商標の使用に制約は付けないそうです)。

まずは、その定義をみてみましょう。

●『うどんは、太くて長いことから、古来より長寿を祈る縁起物として食べられてきました。「年明けうどん」は、純白で清楚なうどんを年の初め、(元旦から1月15日まで)に食することで、新しい年の到来を祝い、人々の幸せを願うものです。』

●メニューとして純白のうどんに一点、新春を祝う「紅」を用います
元旦~15日に、うどんに【紅】をトッピングすれば「年明けうどん」。


<例>
【紅】蒲鉾・えび天(練り物)
【紅】桜えびの掻き揚げ
【紅】金時人参の掻き揚げ
【紅】梅干し
【紅】海老の天ぷら
【紅】トマト  など…
その他、ご家庭で簡単に食べられる【紅】をトッピングすれば「年明けうどん」の完成です。

同会によると「年明けうどんは、うどんのさらなる普及と新しい麺食習慣の創造を目的に提唱させていただくものです。これを全国的にPRし、広めてゆくことで、香川のさぬきうどんのみならず、全国の名産うどんの活性化に貢献したいと考えています」とのこと。

※さぬきうどん振興協議会「年明けうどん」資料より

年明けうどん、年越しそばとの関係は?

年末には「年越しそば」、年初には「年明けうどん」となるのでしょうか…

年末には「年越しそば」、年初には「年明けうどん」となるのでしょうか…

「年明けうどん」と聞けば、誰もが「年越しそば」を連想するはず。提唱するさぬきうどん振興協議会でも、『年末には「年越しそば」を食べ、お正月にはその年の幸せを祈りながら「年明けうどん」を食べましょう』とPRしており、大先輩の「年越しそば」を見習いつつ、年末年始の行事に定着させたい考えです。

「年越しそば」の風習は、江戸時代の町人の習わしだった「晦日そば」に由来するといわれており、細く長いことから長寿祈願、金銀細工師がそば団子で金粉を集めたことから金運上昇を願う縁起物などと各地でいわれ、親しまれるようになりました。この他にも、そばはよく切れるから1年の苦労と縁が切れる、博多の寺で町人にそばをふるまったところ翌年の運気があがったなど、様々な言い伝えがあります。薬味のネギは「労ぐ(ねぐ)」、「祈ぐ(ねぐ)」、神職の「祢宜(ねぎ)」に通じ、この1年をねぎらい、新年に幸福を祈願するというもの。年内に食べないと縁起が悪いとされ、年末年始の行事の中でもトップクラスの実施率をほこります。

年明けうどんの定義と比較しても、縁起を担いだりトッピングで意味を強めたりする点が似ていますが、こうしたことはほとんどの行事食の共通点であり、親しまれる大切な要素。例えば、おせちはその集大成です。
 

年明けうどん発祥地・香川のうどん事情

7月2日は「うどんの日」

7月2日は「うどんの日」

​​​さぬきうどんの地・香川県では、うどんの消費量も断トツ1位で、7月2日を「うどんの日」としています。葬式の後は長引かないよう四十九日までうどんを食べないなど、うどんにまつわる様々な風習が存在しますが、中でもユニークなのが、香川の一部地域に残っている、風呂を新築したら一番風呂に浸かってうどんを食べるという風習です。新しい風呂に入ると中風(脳血管障害やその後遺症のこと)にならず、さらにうどんを食べると長生きすると言われており、うどんが縁起物であることを物語っています。

冠婚葬祭などで必ずといっていいほどうどんが振る舞われ、年越しそばのかわりにうどんを食べる家庭も多いといいます。正月もおせちやお雑煮に飽きたらうどんを食べるそうで、「年明けうどん」がどのように成長していくのか興味津々という感じです。

ちなみに、うどんは平安時代に弘法大師空海が唐から持ち帰ったとされ、大師の御生誕所である善通寺(香川県善通寺市)で「うどん法要」が行われています。

年明けうどんの多彩なレシピ、提供店やカップ麺も

紅しょうがの天ぷらをのせた年明けうどん

紅しょうがの天ぷらと紅いかぼこをのせた年明けうどん

年明けうどんは紅い具をトッピングすればいいため家庭で作れます。紅い具をのせるだけでもいいのですが、変わったレシピで作る方も少なくありません。

年明けうどんのレシピ集
 
また、年明けうどんの提供店も増えています。2020年には、日清「どん兵衛 年明けうどん」が発売され話題になりました。

今では当たり前になっている様々なしきたりも、そのルーツをたどると、どこかで誰かが始めたことに意味を見出し、多くの人に支持されて定着したものばかり。それが一定地域でとどまれば地方の文化になり、全国的な広がりをみせれば日本の文化になるわけで、「年越しそば」にも地方独特の呼び名や言い伝えがあります(「寿命そば」「運気そば」「福そば」「縁切りそば」など)。近年人気上昇中の節分の恵方巻も、大正時代の大阪発祥の風習が全国に広がり、日本の文化に昇格しようとしています。

うどんは日常的な食べ物ですから、今までにも元旦から15日までの間に一度ぐらいはうどんを食べているかもしれません。それを「年明けうどん」と意識し、縁起よく紅のトッピングをするだけで幸せ祈願ができるのですから、浸透するかどうかは認知度が左右するはず。この先、年明けうどんがどうなっていくのか、長い目で見守りたいと思います。

【取材協力】 
香川県東京事務所
「年明けうどん」公式ホームページ
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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