暮らしの歳時記/日本のしきたり・マナー・ことば

座布団の向き・置き方、お茶やお菓子の出し方…おもてなしの基本を解説

座布団の置き方やファスナーの向きは?仏壇用の座布団の場合は? 床の間が上座になるのはなぜ?お茶とお菓子の並べ方は?……日本には、日本ならではのおもてなしの仕方があります。基本となる「座布団の表や向き・置き方」「お茶やお菓子の出し方・並べ方」「なぜ床の間が上座なのか」を知っておきましょう。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

暮らしの歳時記ガイド

知らないと困る、和のおもてなしの基本を解説!

お茶とお菓子の位置・出し方から、座布団の向き・置き方、床の間の飾り

お茶とお菓子の位置・出し方から、座布団の向き・置き方まで……知らないと困る和のおもてなしとは?

気心の知れた友人から、きちんとした来客や法事まで、暮らしの中でおもてなしをする機会は多いもの。もてなす気持ちが大切ですが、基本を押さえておくとどんな時にも失礼なく対応できます。

特に日本ならではのもてなし方があります。大人のマナーとして再確認するだけでなく、親から子へきちんと伝えておきたいですね。お手伝いは絶好のチャンスですが、実は大人も知らないことばかり?!
   

おもてなしの素朴な疑問

座布団の表?正面ってどこ?
例えば、こんな素朴な質問にあなたは何と答えますか?

親:「座布団の準備を手伝ってね」
子:「座布団の表はどっち?向きはあるの?」 
⇒ 正解はこちら  


親:「お客様は床の間のある方の上座に座っていただいてね」
子:「床の間ってなに?どうして上座なの?」 
⇒ 正解はこちら 


親:「お茶とお菓子の準備ができたから、運んでね」
子:「お茶とお菓子、どっちを先に出すの? 並べ方は?」 
⇒ 正解はこちら 

 

座布団の置き方や向き、表はどっち?ファスナーは?

座布団は、表を上にして、正面をお客様の膝頭がくる方に向けましょう。

【 座布団の表 】
座布団の中央にあるしめ糸に注目!しめ糸の房があるほうが表です。
※両面使えるよう、しめ糸がない座布団や、両面に房のある座布団もあります。
座布団の置き方・向き 真ん中に房がある表を上に

座布団は、真ん中に房がある方が表。座布団の向きは表を上に。


【 座布団の正面 】
座布団の輪に注目! 座布団は袋状になっており、一辺が輪になっていて、三辺が縫い合わせてあります。座布団は、縫い目のない輪の方が正面となります。
座布団の向き・置き方 向きは縫い目のない輪の方を膝頭がくるように

座布団は縫い目のない輪の方が正面。座布団を置く向きは、輪の方に膝頭がくるようにしましょう。子供の頃から慣れ親しんでおくと安心ですね


【ファスナーがある場合】
座布団カバーをかけているときは、ファスナーが後ろ側になります。
※正式には、カバーをかけていない座布団を出します。
座布団の置き方・向き ファスナーが後ろ側

座布団カバーをかけた場合、座布団の向きはファスナーが後ろ側になるようにします

また、お客様にはあらかじめ家人が準備した座布団の位置を勝手に動かさないというマナーがあります。座る位置を考えて準備しましょう。

その他の座布団マナーについては「日本人のしきたり、およばれのタブー」をご覧ください。

 

仏壇用の座布団の置き方・向き

仏壇の前には座布団がありますが、通常よりも大きくて厚い「御前座布団」「仏前座布団」と呼ばれる仏壇用の座布団を用いることが多いです。これは、長い読経に配慮し、大きく厚く上質に作られているからです。

仏壇用の座布団の置き方は、通常の座布団と同じです。中央のしめ糸の房があるほうが表となり、縫い目のない輪の方を仏壇側に向けて置きます。法事では、皆が仏壇の前に座っているお坊さんに注目するので、座布団の置き方を間違えないよう気をつけましょう。

 

床の間とは

では次に、床の間についてチェックしましょう。 どうして床の間のある方が上座になるのか、ご存知ですか?
掛け軸や生け花が飾りつけられた床の間

掛け軸や生け花が飾りつけられた床の間

床の間とは、和室の一角に造られた座敷飾りのひとつで、季節に合わせた掛け軸や生け花などを飾る場所。でも、茶の間に床の間はありません。また、床の間がある方が上座ですね。それはいったいなぜでしょう?
 

床の間の成立ち・由来・起源

茶の湯によって床の間も変わりました

茶の湯によって床の間も変わりました

床の間の起源は、室町時代、僧侶の住まいで仏画の前に机を置き、香炉・花瓶・燭台の三具足(みつぐそく)を並べたものです。その後、これを造りつけにした押し板が登場し、貴族や武家の住まいに取り入れられて飾りものを飾るようになりました。

やがて、押し板、違棚、付書院が部屋を荘厳化する装置となって、書院造に発展しました。そして他の部屋よりも一段高い押し板がつけられ、主君が家臣と会うときなどに使う「上段の間」ができ、これを「床」と呼ぶようになって、「床の間」となりました。もともと「床」という言葉には、人が座る「座」や「寝床」という意味があります。

後に茶室が造られるようになると、上段と押し板が縮小され、今でいう床の間の形になりました。
 

床の間の使い方

鏡餅を床の間に飾るのは、そこが神聖な場であり、年神様の拠り所として相応しいからです

鏡餅を床の間に飾るのは、そこが神聖な場所であり、年神様の拠り所として相応しいからです

床の間の成立ちからわかるように、はじめは神聖な場所でした。それが、書院造では上座に座る人(お城なら殿様、武家なら主人)の格式を示すものとなりました。

やがて江戸時代になると、庶民が床の間を造ることは贅沢だとして規制されてしまい、明治時代以降は客間に設けるようになりました。茶の間に床の間がないのもそのためで、現代でもお客様は床の間のある部屋に通され、床の間のある方が上座なのです。

こうした成立ちをふまえると、床の間のこんな使い方も頷けます。
  • 鏡餅は床の間に飾る
  • 床の間に仏画を飾る
  • 床の間に仏壇を置く
  • 大切なものをまずは床の間に供える
  • 床の間に季節に合わせた掛け軸や生け花などをしつらえる 
 

現代生活にマッチする「置き床」アイデア

現代は客間がある家が少ないですし、床の間まで設ける家はさらに少ないでしょう。

そこで、お客様をもてなすリビングに床の間にかわる場所を設け、おもてなしの心を表すしつらいをしてみてはいかがでしょう。例えば、リビングボードや出窓などを上手に活用します。

また、置き床 (おきどこ)にする方法もあります。床に厚い板などを置いて花などを飾り、壁に季節の絵やタペストリーをかければOK。必要なときに好きな場所にしつらえればいいので、とても便利です。
 

お茶とお菓子の出し方・並べ方は?

【出す順番】
お菓子が先、お茶が後です。

  【運び方】
お菓子とお茶を別々に運んでも、一緒に運んでも構いませんが、ポイントを押さえましょう。
  • 茶托にのせたまま運ばない。茶托と茶碗を別にして、お盆にのせます(ふきんを一緒にのせて行くと、粗相をしても対処できます)
  • お盆は胸の高さに持つと、運びやすくて見た目も美しくなります
茶托をはずして運び、出す直前にお盆の上で茶碗を茶托にのせて出しましょう。ふきんがあるとこぼしても対処できて安心ですね。

茶托をはずして運び、出す直前にお盆の上で茶碗を茶托にのせて出しましょう。ふきんがあるとこぼしても対処できて安心ですね

 
 
 

【並べ方】
お客様から見て、お菓子が左、お茶が右。
  • 一旦お盆を下座側の畳に置き、お客様から先に出します。
  • お客様に器の正面を向けて出します。
まずお菓子を左側に出し、次にお茶を右側に並べます

まずお菓子を左側に出し、次にお茶を右側に並べます


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