雛祭りが近づく頃、長崎の町を彩る甘くて可愛い「桃カステラ」。中でも私が魅せられた長崎の老舗「松翁軒」の桃カステラは、美しい仕上がりに品のある甘さ。美味しさにとろけそうになりました。尋ねたところ、嬉しいことにお取り寄せが出来るとのこと。ただし、1つ1つ手作りするため、数には限りがあるそうです。ご注文はお早めに!

(目次)
P1 長崎カステラと「松翁軒」、「桃カステラ」
P2 和菓子の技を生かす「小倉カステラ」

長崎カステラと「松翁軒」

カステラ
カステラの底のザラメは
時間の経過と共に溶けてゆく。
(写真提供;松翁軒)
1681年創業、長崎カステラの老舗「松翁軒」。現在は、昨年12月に11代目主人となったばかりの山口喜三氏が暖簾を守ります。

職人各々が各自のカステラを、生地作りから焼き上がりまで一貫して手掛ける松翁軒のカステラは、ふんわりもっちり、そしてしっとりとしてきめ細やか。底には長崎カステラの特徴である、溶けずに沈んだザラメが残り、シャリリと小気味良い食感です。

南蛮渡来とはいえ、工夫を重ねて完成されたカステラは、もはや日本独自のもの。卵、上白糖、ザラメ、小麦粉、水飴だけでここまでしっとりと、それでいてふんわりとしたお菓子を作り上げた先人の創意工夫と技に、改めて感心してしまいます。

観光客の要望を受け、インターネット販売開始

カステラ
松翁軒で販売されている
「たべやすく切ったカステラ」。
美しくカットするのが難しい
カステラも、これで悩み解決。
私が初めて松翁軒のカステラを知ったのは姉の修学旅行の長崎土産でした。小さな0.5号のカステラの、異国情緒溢れるパッケージが洒落ていて、港町長崎に憧れを抱いたことを思い出します。

九州外には店舗を持たない松翁軒ですが、私のように長崎土産で口にした人や観光客から取り寄せの希望が多く、それに応えて10数年前からインターネットでの販売も行っています。

桃の節句に「桃カステラ」

桃カステラ
「桃カステラ」
中国と南蛮文化の折衷菓子。
(写真提供;松翁軒)
この時期のお勧めは、長崎では桃の節句に欠かせない「桃カステラ」。桃の形に焼いたカステラに、砂糖と水飴を練り上げた「すり蜜(フォンダン)」をかけて仕上げる愛らしいお菓子です。

桃の実は、中国では不老長寿をもたらす縁起の良い果実とされ、尊ばれてきました。中国伝来の吉祥の意匠である桃の実に、南蛮伝来のカステラの融合した「桃カステラ」は、長崎ならではの折衷菓子です。

3月3日が近づくと、長崎の町は桃カステラで彩られると聞きますが、中には人気の高さから、年中販売している店もあるとか。

桃カステラ
カステラもすり蜜も柔らかい、
繊細な「桃カステラ」。
丁寧な梱包で、無傷で届く。
松翁軒では、桃の形に焼いたカステラに、すり蜜を2度かけて、煉切の葉と芯で飾って仕上げています。すり蜜の表面はつるりと滑らかで、陶器のような美しさです。

土台となるカステラは、甘いすり蜜とのバランスを考えて、通常のものよりもあっさりとした焼き上がり。すり蜜をまとったカステラは、どこか懐かしさのある優しい甘さで、一口食べるととろけるような幸せ感に包まれます。

長崎では、お宮参りや初節句、さらに結婚式にも用いられてきた桃カステラですが、山口氏によると、近年ではバレンタインや卒園式などにも需要があるとのこと。確かにこの可愛らしさと美味しさ。色々な機会に求めたくなる気持ちがよく分かります。

長崎外では手に入れることが難しい桃カステラですが、松翁軒ではインターネットで購入可能(※)。ただし、1つ1つ職人が手作りするため数には限りがあります。予約が集中すると、手元に届くまでに1週間以上かかることもあるそうなので、ご予約はぜひお早めに。

※桃カステラ販売期間;インターネットでの販売は2月上旬頃~3月末日頃まで。店頭での販売は10月~3月まで(要予約)。

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