和菓子/お取り寄せ和菓子

「松屋菓子舗」鶏卵素麺の遥かな旅(2ページ目)

ポルトガル伝来の南蛮菓子、「鶏卵素麺」をつまみながら熱々のコーヒーを啜っていたら、どこへ行っても「卵黄と砂糖」の黄色いお菓子ばかりが目に付いた、ポルトガルの旅を思い出しました。

原 亜樹子

執筆者:原 亜樹子

和菓子ガイド

ポルトガルから日本へ

たばね
「鶏卵素麺 たばね」
美しさと、カットせずに
食べられる手軽さが魅力。
私が初めて口にした「松屋菓子舗」の鶏卵素麺は、お茶の席で「たばね」という名で出されたものでした。通常よりも少し乾燥させた一口大の鶏卵素麺を細い昆布で束ねたもので、懐紙の上で金色に輝き、絵になる美しさに感動したものです。

ポルトガルを旅した際に、あちこちで目にした鶏卵素麺の原型、Fios de Ovos(卵の糸)は、基本的に日本に伝わるものと同じ姿でしたが、鶏卵素麺が懐紙に映える楚々とした仕上がりなのに対して、Fios de Ovosは手作り感あふれた大らかな形のものが多かったことが印象に残っています。

菜の花
カットした鶏卵素麺に
すり蜜をかけた、季節限定の
「菜の花」(2月下旬~4月中旬)
そのまま食べるだけではなく、お菓子のデコレーションなど、素材の1つとして扱うことも多いFios de Ovosに対して、ほんのひと口をじっくり味わう鶏卵素麺は、より美しい仕上がりが求められたのかもしれません。

日本の三大銘菓の1つに数えられることもある鶏卵素麺。他の三大銘菓である金沢の「長生殿」、長岡の「越の雪」、それに鶏卵素麺とその座を争う松江の「山川」が全て干菓子なのに対し、鶏卵素麺は少し毛色が異なります。ポルトガル伝来のその味は、お抹茶だけでなく、エスプレッソにも合います。

世界に広がるポルトガルの味

このお菓子はタイではジャスミンの香り漂う「フォイ・トーン」、カンボジアでは「Vawee(ワウィー)」(通称Yot(ヨット)(※))として今に伝わっています。

メキシコやマカオでも同様のお菓子が伝わり、愛されていると聞きますが、材料の卵と砂糖がどこでも手に入れやすいこと、そして何よりもキラキラと光る金の糸の美しさが、国を問わず人の心を魅了したのではないでしょうか。艶やかに輝く鶏卵素麺を前にして、そんなことに思いを巡らします。

今までは福岡以外では手に入れるのが難しかった松屋菓子舗の鶏卵素麺ですが、昨年10月からオンラインショップを通じて取り寄せることができるようになりました。300年前に海を越えて福岡に伝わった味が、日本各地へ広がろうとしています。

※情報提供;カンボジア政府観光局

<店データ>
■「松屋菓子舗」 (閉店しました)
■「松屋菓子舗 オンラインショップ」(※閉鎖)
本店所在地:福岡県福岡市博多区上川端町14-18
TEL:092-291-5244
営業時間:9:00~19:00(月~土)9:00~18:00(日・祝日)
定休日:年始を除き年中無休

◇予算一例:
「鶏卵素麺」1本1,050円
「鶏卵素麺 たばね」8個入1,470円
「菜の花」季節限定(2月下旬~4月中旬)1個168円(以上税込)


【上生菓子の美味しいお店】
キリッと江戸風「秋色庵 大坂家」(三田)
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