アメリカのお母さんが、息子を連れてやってきた
意外なことに、まず動いたのは、アメリカだった。
「手打ちそばの手ほどきをお願いしたいのですが…」という書き出しでメールが届いたのは、それからしばらくしてからのことだ。ソルトレイク・シティにお住まいのお母さん。夏休みにまだ高校生のご子息を連れていくので、よろしく!との内容。翌週、彼女は本当にやってきた。
あどけない貌つきの高校生、Zちゃん。聞けば将来は和食の料理長を志しているという。今回の来日は、岡崎市で開講される日本語の集中講義を受けるためで、それに先だって築地でそばの手ほどきをうけることにしたという。「さ、お母さんもご一緒に習っていってください」(なにしろ貸切扱)とお誘いすると、ニッコリ笑って、「いや私はいいのよ(小声で:だって、この子は彼のママとはいっしょに習いたくないって思ってるわ)。じゃあね!」と立ち去ってしまった。
▲米国の高校生「Z君」のはじめての蕎麦切り、スジがいい!
Zちゃんは、さすがに和食の心得があるせいか、全工程をソツなくこなしたうえ、最後の切りもいい感じで庖丁を使いこなしていた。片刃を取り扱うスキルを持っているせいなんでしょうね。
何日かのちに、ママからメールが届いた。「あの子は、築地の教室がとても気にいったみたい。たぶんこんど、開業総合科でお世話になることになるわ。またね」
それが実現すると、西洋人かつ最年少受講者という二つの「初」が、彼の受講歴を飾ることになるであろう。