そば/東京のそば屋

東京都港区:遊び心のあるそば店でコースを所望 竹やぶ六本木ヒルズ店探訪記

美味しい物を食べ尽くしたカップルが、そうだ明日はそばでも啜りながら酒呑もうか、なんていう設定に恰好の隠れ家。

執筆者:井上 明

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六本木ヒルズ。おじさんが一人で迷い込むにはちょっとツライ街かもしれない。ここでは、きらびやかなイルミネーションに華やかな嬌声がからみ、小洒落たファッションと、気取った仕草が似合う。結城昌治の小説に出てくる法律事務所の女性事務員が、けだるい午後に少し延びたモリ蕎麦を啜っている、そんなソバを北極とすると、こういった街でいただくソバは南極に位置する。出前単品~バーサス~豪華絢爛なるプレフィックス。てんで、はなから勝負にならない。「ソバ」というキーワードでは括りえない別世界、が、ここにある。

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▲六本木に新しい核

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▲まばゆいけやき坂通り

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▲喧噪から隔絶されて…

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▲夕方は、夜伽タイム(予約制)

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▲迫力のウェルカム酒肴

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▲しばしあとに烏賊の塩辛

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▲玉子焼きは当然関東風

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▲型で整形されたかき揚げ

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▲そばがき(ゆるめ)

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▲粗碾き(ちょっとだけ)

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▲かけそば

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▲せいろそば

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▲デザート(バニラ)

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▲デザート(漉し餡)

美味しい物を食べ尽くしたカップルが、そうだ明日はそばでも啜りながら酒呑もうか、なんていう設定に恰好の隠れ家。
いーじゃないですか、こういう店があっても。


ちょっと前まで、六本木で最も地味だったあたりがどーんと再開発されて六本木ヒルズになった。そうすると人の流れも変わるんですね。
その昔は、どこが正面だかよくわからないテレビ局があったり、懐かしい感じの公団住宅があったりしたフツーの街だったのに。

新しい街や建物にありがちなことに、とてもインフォメーションがよくない。六本木ヒルズに限ったことではないが、不用意に立入ってしまうと、迷ってしまう。こなれていない開発と、誘導するという目的を見失ったサインディスプレイが混乱を助長している。情けない。

さて、本日の目的地竹やぶは、六本木ヒルズ森タワーの裏手のけやき坂通りを渡ったところにある住居棟=六本木ヒルズレジデンスの中にある。昔の下駄履き住宅よろしく、路面の1Fとペデストリアンデッキのようになった2Fにブティックや飲食店等が入居し、上層階が住宅として計画されている。

どうしたことか、竹やぶへのアプローチは全くさえないルートである。他人の家のマンションの裏口のような階段を使っての経路は、なんだかなぁである。意図されて地味ならいいのだが、きっとそうではないところがちょいと寂しいのである。

しかし見方を変えれば、「とっておきの隠れ家」ともいえる。地味ゆえにさりげなく風景に溶け込んだ入口を潜ると、竹やぶ独自の蕎麦と酒の時空間が広がっていた。

予約の名前を告げ、席に案内されると、とりあえずどーんと提供されるのが15品にもおよぶ酒肴のセットだ。クルマエビの粕漬けをはじめ、豆腐よう、身欠きニシン、蟹味噌、そして江戸前の蕎麦味噌など、もりだくさん。用意されている酒は、梅錦と天狗舞。どちらも片口の器にて正一合を提供してくれる。冷やも悪くないが、きっちりと人肌のお燗も嬉しい。

この酒肴セットのおかげで、一合1,500円という酒がついつい進んでしまう。やられたなぁ(笑い)。

しばらく後に出てくるするめ烏賊の塩辛は、熱々の陶板といっしょに供され、ジュッと焼いて召し上がっても…とのこと。面白いとは思ったが、私としてはノーマルな食べ方が好きかな。

竹やぶの評判のなかに、「量が少ない」という声があるという。でも、ちょっと待ってくださいよ。多ければいいんですか?たとえば、コースの途中に出てくる出汁巻き玉子。この位が適量だと思う。あんまり量が多いのは、一種の拷問のようだと感じてしまう人たちもいるのです(例えば、私)。ちょっとずつ、美味しい物をいろいろと…。ここはそういうスタイルが似合う店なのです。

お次は評判のかき揚げだ。かき揚げの王道ともいうべき、しっかりと混ぜた卵黄勝ちの粉に、海老や銀杏がひそんでいる。エスニックな皿も、この店の気分である。

さて、ここから蕎麦特集モードに移行する。
まずとろーんとゆるい蕎麦掻きの登場。固いそばがきよりも、この位の優しい練り上げのほうが、最近のトレンドみたいです。軽い食感なので、このあとの蕎麦の邪魔にならない。もちろんお店の側では調理に力がいらなくなるわけで(そばがきって、タイヘンなんです)、お店もお客さんもいいことだらけというわけです。

そしていよいよ!真打ち登場という感じで粗碾が出てくる。粗碾なのに、薄くのしてあって結構細い。高台の器がお洒落で素敵でした。

最後の蕎麦は、せいろかかけが選べる。どちらも麺線をあえて切りそろえていないようで、素朴な庖丁仕事でした。どちらを選ぶかはお好みですが、粗碾が冷たいがゆえに、かけを選択したほうが味わいの幅が広がるような気がします。すっと呑み干せるかけじるは、なかなか旨かったですよ。

そしてデザートは、バニラアイスか漉し餡の水ようかん風。コースとお酒を堪能したあと、幸せを噛みしめる一時を演出する名脇役なのでありました。

このコース。お酒は別で8,000円です。

竹やぶ 六本木ヒルズ店


住所:東京都港区六本木6-12-2
六本木けやき坂通り
六本木ヒルズレジデンスB 2F

03-5786-7500

■11:30~15:30
 そば、酒、おつまみを
 アラカルトで

■18:00~21:00
 8,000円のコースのみ・要予約

■21:00~22:00
 酒、おつまみ、
 せいろ、かけ のみ
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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