ワインラベルに書いてあること
ワイン入門書によく出てくる、「ワインラベルの読み方」というのがある。ラベルの一例が示され、「ここにこんなことが書いてある」と説明するものだ。ラベルを見ても何が何やら判らない、という初心者には心強いのだが気をつけたいことがある。例えば、「ここに書いてあるのがアルコール度数」というような解説はいいのだが、初心者は「おっ! アルコール度数は必ずココに書いてあるんだな! ワインって案外簡単ね」という理解をしてしまいがちである。
ところがじつは、アルコール度数は表ラベルの下部、左右どちらかの角に書かれていることが多いけれど、裏ラベルに書かれている場合もある。書かれている位置はまちまちなのである。ラベルを示して、「ココにコレが…」と指し示すことが、意外な誤解につながることがある。
アルコールだけではなく、生産者名、ブランド名、ワイン名、ブドウ品種名、スタイル(白、ロゼ、赤、甘口、辛口など)畑名などワインの表示項目は多岐にわたる。ラベルのどこに何を書くは各国の法律や各地の習慣などにより、また法律の範囲内でラベルを読みやすく消費者の印象に残る魅力的なデザインにしようと工夫しているメーカーや販売会社の方針にもよるのである。
ほんとうの読み方
ラベルの言葉は簡単なものもあるが、名前ひとつとっても生産者名なのか、ブランド名なのか、そのワインの名前なのか、地区名それとも区画名か……これらは予備知識がなければ見分けられない。無数のブドウ品種名や畑名にしても、プロでも知らないマイナーなものもあり、初心者に何でも見分けられるはずもない。ということは、結局ワインラベルは各項目について見聞を広めて、個別に解読していくしかないのである。無数のバリエーションがあるのがワインの良さであり、判り難さでもある。だが、我々は日常的に、例えば誰か知らない監督が撮った映画を観て、初めて見た俳優を気に入って名前を憶えたりするはずだ。ひとつの映画から未知の国や人々に興味が広がるようにワインのラベルからも、それまで知らなかった世界が広がるのだ。
ワインラベルに載っている言葉をインターネットで検索すればさまざまな論評やら情報が見つかる。知らなかった言葉を解説してくれるのである。また、最近では多くの生産者が、写真や情報が豊富な自社ウェブサイトのURLをラベルに載せている。おいしいワインを誉めながら、あるいは好みに合わないワインをけなしながら、ワインに関連した自分の世界を広げるのがラベルのベストな「読み方」だと私は思う。