熟成と濃厚さの年代物
4番目のワインはスミス・ウッドハウス社の10年熟成トーニー。トーニーとは樽の中で長期熟成による風味が特徴で、「10年熟成(Ten Year Old)」と表示した場合には、平均あるいは最低10年の樽熟成を経ている。ナッツのような酸化を伴うまろやかな熟成香で、色合いもオレンジ色や茶色を帯びて若干淡くなる。「熟成に由来する白カビチーズの香り、酸味を帯びた乾しアンズ、メイプルシロップの風味があり、やわらかく上品」(中林氏)なので、ナッツや熟成感のあるパルミジャーノチーズと合わせたい。
5番目のワインはバロスのコリェイタ1996年。コリェイタはポルトガル語でヴィンテージを意味し、ひとつの年に収穫されたブドウを使ってトーニー同様の樽熟成を経たものである。「ヴィンテージ・ポートに近い風味に仕上げるために粗濾過して瓶詰めする」(中林氏)が、これもかなり熟成が進んだ色合いで、レーズンや乾しアンズのような果実味がたっぷりあり、かなり濃厚な風味である。
最後に供されたヴィンテージ・ポートはグラハム社の1980年。ヴィンテージポートはその生産者のトップワインで、約3年と短めの樽熟成後に瓶詰めされた後で数十年の熟成ポテンシャルがある。このワインは、収穫から30年近く経っていると思えないほど若々しい風味だ。「ブラックベリー、ブラックチェリー、白カビチーズやブラックペッパーなどのスパイス」(中林氏)と多彩な風味がかなりエレガントに調和しているところが、さすがポートの最高カテゴリー。甘味も果実味もしっかりと濃厚なので、デザートと一緒に飲んでも互角に張り合える味わいである。
このように、ポートといっても異なる味わいのカテゴリーがある。好みや合わせたい食べ物によっても、応用範囲は広い。しかもトーニーやルビーは開栓してから長く楽しめるので、キッチンに1本置いておけばほんの少しだけワインが欲しい時など重宝するのである。ぜひ試してみてほしい。