3つの素材と2つの香り
曼陀羅のような複雑さが楽しめる一皿目と比べて次の前菜は素材の数を減らし、オマール(いわゆるロブスターの仲間で大型のエビ)、グリーンアスパラガス、アーモンドと3つの食材を組み合わせる。オマールはバターで焼き、アスパラは塩ゆで、アーモンドは世界でも最高品質といわれるスペインのマルコナ種をローストしたものを使っている。アーモンドミルクの泡をあしらい、オレンジとヴェルヴェーヌ(ハーブの一種)のパウダーをまぶして香りのアクセントとしている。シンプルで勢いのある皿と見受けた。
ホカホカと立ち昇るオマールの香り。香ばしいアーモンドの香りをしっかりと抽出したミルクの泡からも、湯気が立つ。しっとりと瑞々しく味わいのしっかりしたオマールとアスパラは好相性だが、オマールとアーモンドもこの上なく相性のいい食材で、オレンジやヴェルヴェーヌもオマールの香りとはよくなじむ。またもや、相性のいい素材の輪が広がり、皿の上に幸せな関係が築かれている。ひらりと添えられた葉が逆立ちしているのは、ありきたりなことは皿の上でやらないという料理人の意思の表れだろう。
2006年サン・ジョゼフ(ピエール・ガイヤール) |
オマールに高価なシャルドネなどを合わせることはよくある。だがこうした隠れた逸品を探し出し、料理と共に提示してくれるのが優れたレストランである。料理と共に味わえば、ワインのコクや香ばしさそしてハーブのようなアロマがそれぞれの食材と呼応して、これはもう、暫しの極楽である。