生野菜だからこそ

『バーニャ・カウダ』はピエモンテ州の言葉で「熱いソース」を意味するという。その名の通り、生野菜をオイルとニンニクそしてアンチョビを混ぜて温めたソースに浸して食べる。シンプルなだけに野菜とソースの質が問われるものだ。ひとつつまんでみよう。氷で冷やされた野菜はどれも弾けんばかりの活きの良さで、歯応えが『カリッ』『サクッ』と大きな音をたてる。熱いオイルと冷たい野菜が混じって、口の中で温度のモザイクを描く。

『バーニャ・カウダ』

もしもあなたが「たかが生野菜…」と思ったとしたら、それは大きな間違いである。実はこれらの野菜、イタリア産のものと契約栽培農家から取り寄せた風味の濃いものを使っている。野菜によって適した冷やし方や時間が違う。そしてソースが冷めないように、専用の器には保温用の火が入っている。ソースに使うニンニクは、牛乳で茹でこぼして香りを和らげながら、ねっとりと甘味が活きるように加熱してある。

店長の二本松さんは「ワインをお勧めするポイントは『腑に落ちる』かどうかです」という。「まず、料理との相性。味わいや質感といった点で料理と相乗効果を上げる、あるいは対比的な役割となること。そして、地理的、文化的につり合うこと。いろいろな面で『腑に落ちる』かどうかが、いちばん重要なテーマなのです」

レチット DOCGロエロ・アルネイス(モンキエロ・カルボーネ)
ピエモンテ州名物のバーニャ・カウダにはピエモンテ州のモンキエロ・カルボーネという生産者がアルネイスというブドウで造る『レチット』を勧めてくれた。「さわやかな柑橘系の香りと果実味が乗っていますが、比較的サラッとした質感で後味にほんのり苦み。塩味と甘味の対比とピエモンテ州らしい組み合わせです」と、味わいだけでなく風土や文化といった背景をぴたりとコーディネートしている。