食材の群像ドラマ
いわゆる豚の角煮に似た「和豚のワイン煮」と対になって供されたのはキノコを里芋に練り込み、しっとりとあんで絡めた「茸の里芋饅頭」。白胡椒と辛子が別皿に置いてあったのは、好みによってどちらの料理に付けてもいいという意味だろうか? 合わせたのは赤2種。マアジのブローロ・ディ・カンポフィオリン2004年、そしてテヌーテ・フォロナーリのカブレオ『イル・ボルゴ』2004年である。マアジのブローロ・ディ・カンポフィオリン。ブローロ(Brolo)はフランス語のクロ(Clos)に当たり「壁で区切られた畑の区画」を意味する。ヴァルポリチェッラ・クラッシコ地区の中心部にあるカンポフィオリン畑のブドウで造るのである。
まずコルヴィナ種を主体にロンディネッラ種を全体の2割加えて25日ほど発酵させる。次にコルヴィナ種ブドウの一部を軽く陰干し(アパッシメント)したものを加えて15日ほど再発酵させる特殊な製法だ。なめらかなでほんのりとレーズンのような風味があり、和豚のワイン煮に合う。
サンジョヴェーゼにカベルネ・ソーヴィニヨンを3割加えたイル・ボルゴは、フォロナーリ兄弟がキャンティ地方に所有するカブレオというワイナリーで造る。これはしっかりした味わいのワインではあるが、カベルネの上質な皮革やラズベリーにも似た風味が上品で柔らかく「茸の里芋饅頭」とも呼応する部分がありそうだ。
和牛を使ったサイコロ型ステーキには「もやし 紅葉人参 公孫樹南瓜 木の芽芋 フォアグラ溜り醤油ソース 素麺3種 バジル 浅利 アンチョビ」と、サイコロ3つにトッピングが分かれてはいたが、数多くの構成要素が詰め込まれていた。
マストロベラルディーノのタウラージ『ラディーチ』2003年やピオ・チェザーレのバローロ2002年といった、渋味や構成がしっかりしていてすこし熟成感のあるワイン。これに合わせるなら、ステーキにフォアグラ溜り醤油ソースだけを熱々で供しても良かったように思う。
デザートに洋梨(ラフランス種)のコンポートと合わせたのは、ドンナフガータ社の甘口ワイン。これは1本あたり4キログラムの地元品種ジビッポを陰干しして造るというだけあり、アプリコットや黄桃、色の淡いハチミツといった風味があってデザートと互角に魅力を発揮していた。
このコースで見たようなワインと料理の組みあわせや和食をワインとあう風味に引き寄せる工夫は、家庭でも手軽に応用できるものばかりである。さあ、あなたも今日は、和食にイタリアワインを試してみてはどうだろう?
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