どんなワインでもいい。健全ならば
富永博士の話では、特定の香り成分を作り出すように酵母の遺伝子組み替えも行なわれているという。セミナーを聴講していた堀賢一氏が酒類業界紙『ウォンズ』で、世界的なワインの風味の画一化への危惧を表明したのに触れて「ヴィンテージやテロワールが支えるティピシティつまりアイデンティティーの表現があればいい。科学がワイン造りを助けるのです」と応じた。また付け加えて「どんなワインもあっていい。だが、健全なワインを好きになって欲しい。クリーンであれば好みは認めるが、欠点臭があるワインがいいと言っても独り善がり」と述べた。
化学的に分析していくと「この成分が良い」「あの成分が悪い」と判明し、分かったのだから改善しようという論理と手法。このようにしてワイン醸造は進歩してきたのだが「どのような手法で改善を推し進め、どこまで人為的に操作するか?」という点で議論の余地があるようだ。
世界のワインのさまざまな側面で、日本人がチャレンジを重ねている。まだまだ他にも優れたワイン造りや研究が行なわれているはずだ。それは、これからも機を見て紹介していこう。
関連サイト
■ アカデミー・デュ・ヴァン 創立20周年記念連続セミナー第6・8・9回を取材。
■ クスダ・ワインズ (楠田浩之氏)
ブルゴーニュ生活 (ビーズ千砂さん)
■ TAKAのボルドー便り (富永敬俊氏)