中国茶/中国茶の基礎知識

中国名茶とはなんだろう?(3ページ目)

「中国名茶」とよくいわれますが、名茶とは一体どんなお茶を意味するのでしょうか?伝統的十大名茶とともに、名茶の意味に迫まってみます。

執筆者:平田 公一

現代銘茶

信陽毛尖
さて、名茶の条件の二番目に掲げられた「名茶品評会等で優良な成績を収めているもの」については、現代になって改めて評価しなおされたお茶という風に理解することができます。つまり歴史名茶に対して「現代名茶」と呼べるものなのです。

現代名茶には、実は、今に残っている伝統的な「歴史名茶」や歴史的なお茶を復元した「復元歴史名茶」も含まれるのですが、基本的には、中華人民共和国設立(1949年)以降、特に1980年代になって新たに指定された「新創名茶(しんそうめいちゃ)」を意味することが多いようです。

中国では、文化大革命後の経済拡大路線を模索し始めた1980年以降、国を挙げて茶業の振興が行われたため、国レベルでの名茶育成が行われることになりました。そのため、農業部や商業部などが名茶品評会を実施し、優秀な成績を収めたお茶を国家優良産品に指定することとされたのです。

例えば、第一回の国家優良産品としては獅峰龍井茶(しほうろんじんちゃ)と祁門紅茶(きーむんこうちゃ)が金奨を、信陽毛尖(しんようもうせん)、盧山雲霧(ろざんうんむ)、重慶陀茶(じゅうけいとうちゃ)などが銀奨を受賞しています。また、新しいお茶としては、高橋銀峰(こうきょうぎんほう)、[シ眞]紅(てんこう)などがリストアップされています。

省レベルの品評会も1989年から盛んに行われ、「省級名茶(ちょうきゅうめいちゃ)」という冠が付され名茶も作られるようになりました。

また、万国博覧会で金奨を受賞した「国際名茶」も名茶に数えられています。特に有名なのが1914年のパナマ万博は有名で、恵明茶(けいめいちゃ)、太平猴魁(たいへいこうかい)、祁門紅茶などの中国茶が金奨を受賞しています。また、国際食品博覧会で入賞したお茶もあり、竹葉青茶(ちくようせいちゃ)、川紅工夫(せんこうくふう)、南山白毛茶(なんざんはくもうちゃ)、西山茶(せいざんちゃ)などが金奨を受賞しています。

さらに、茶の輸出基地として栄えた広州では「茶葉交易会」が開催され、そこで品評会が開催されます。広州茶葉交易会で誕生した名茶には都均(土偏がない)毛尖(といんもうせん)などが有名です。また、杭州国際茶文化節に行われる文化名茶の品評会も有名です。

経済価値のある茶葉

太平猴魁
中国茶の研究を行っている学者の先生方が示す条件には、「経済価値」や「価格が高い」ことなどが掲げられます。

国家レベルで名茶とするには、「経済的に稼いでくれる茶」であることが重要だということになります。つまり、「国内外で需要があり実際に消費される」、「商品として高い経済性がある」、「希少性があり価格が高い」というのは、茶が広く流通することで茶業の振興が達成できる、国内消費の活性化を促し、農業のみならず国の経済も潤うということになるために必要な事項であるわけです。

残念ながら、そこは、私たちがおいしいと思うという嗜好のレベルをはるかに超えた思惑が働く世界なので、名茶の意味に疑問を持ってしまう場合もあるのですが、逆にいえば、多くの消費者の需要に耐え流通するお茶は、そのお茶が持つ優良性が認識され、消費者需要にマッチしたおいしいお茶だといい換えることができるのかもしれません。

国家レベルで茶業を育成し、良質のお茶を大量に生産できるようになれば、消費者の私たちにも価格の安定した良い茶葉が入手しやすくなるということになりますね。

このあたりは、最近の市場経済化した中国の動向を見れば、今後さらに重要性を増してくるのではないかと思われます。しかし、その一方で、農家でしか飲めないような、ローカルな茶が駆逐されてしまうことにも繋がってしまい、中国茶の多様性を失わせてしまうのではないかという危惧も無くはないかなと思います。

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