常滑蓋碗 高資 白の蓋碗 桜
「常滑焼きで蓋碗を作ってみました。」そんな手紙とともに錦園の石部さんから小さくかわいい蓋碗が届いたのは、3月下旬のことでした。

ちょうど、清聞茶会の花見茶会にゲストとして呼ばれて、無我茶会をすることになっていたので、この蓋碗を持ち出して明前龍井を入れることにしたのでした。

この蓋碗は、実は巷にある蓋碗とはちょっと違うのです。なんと、愛知県は常滑で焼かれる「常滑焼」の蓋碗なのです。

常滑焼とは、備前・越前・信楽・丹波・瀬戸と並ぶ6古窯の一つ。実にその歴史は900年に及ぶと言われています。平安末期から江戸時代にかけては、庶民が使う「水がめ」が多く作られていたそうです。

現代の常滑焼の代表はなんと言っても朱泥の急須。高温度(1200~1300度くらい)でじっくり焼いた鉄分の多い「朱泥(しゅでい)」の急須は、お茶好きなら一度は目にしたことがあるでしょう。

磁器と陶器

さて、蓋碗は、普通磁器で作られます。

普通磁器は「陶石」と呼ばれる「石」を原料としているため、表面は白く滑らかで硬質なのが特徴です。そのため、指で弾くと金属のような高い音がします。高温で焼かれるので素地には気孔が少なく、吸水性はありません。

だからお茶を入れると、お茶そのものの味を比較的引き出しやすく、逆に雑味も拾い易く味がとんがってしまう器といえるでしょう。また、熱しやすくさめやすい器なので、やや扱い難い点もあります。

でも、蓋碗はお茶をいれるのには、とても扱いやすい器なのです。だから、磁器の熱しやすい(つまり熱くて持てなくなる)とか、味がとんがるといったデメリットを克服すれば、良い器ができるのではないか、そんなことに思い至った石部さんが取り組んだのが、陶器の蓋碗だったのです。

陶器といっても宜興の紫砂茶壷にとても似た特徴を持つ「[火石]器(せっき)」で作ればデメリットを克服でき、お茶の味わいを優しくすることができるし、さらに、薄く引き上げられた形状によって熱が伝わりにくく、煎を重ねても熱くなりにくいのです。

また磁器だと、どうしても蓋が滑りやすく、時としてつるっと蓋がずれてしまい隙間の調整が難しいのですが、陶器であれば、摩擦係数が高いので、すべりにくくしっかりと蓋を押さえることができるのです。

そこで注目したのが[火石]器である常滑焼というわけなのです。

 


常滑蓋碗 高資 (画像・錦園)

素敵なコラボレーション

この蓋碗の作成には、Xiang Le 中国茶サロンの教授である工藤佳治先生の門下である足利仁美さん(中国国際茶文化研究会日本支部公認インストラクター、中国労働和社会保障部公認茶芸師)が作成に協力されています。石部さんと足利さんが協力して高資陶苑に作成してもらったのがこの蓋碗というわけです。

高資陶苑は、急須作りで有名な常滑の工房です。

通常、常滑の器は職人の手により轆轤でひかれることが多くあります。でも、蓋受けの無い「蓋碗」は蓋の位置を確定させるのが難しく、轆轤による製作では同じものを揃えるのは非常に難しいのだそうです。

そこで活用されるのが鋳込みによる焼き締めの手法。鋳込み製法は本体と蓋の形を揃えやすいのだとか。そのためこの蓋碗は均一感のある美しさを楽しむことができるのです。

この蓋碗は、釉薬がかかっていないのでとても扱いやすく、急須のようにも、湯呑みのようにも使えるフレシキブルな茶器。しかも、「彫り」という常滑の技術を利用して素敵な模様なども入れることができるのです。この蓋碗には、「桜の花びら」が彫りこまれているのが特徴。使い込む内に色艶も育ってきます。

常滑蓋碗 高資のサイズ(図版・錦園)
蓋碗の色は「朱」、「黒」、「白」の3色。花びらのない無地の蓋碗も用意されています。特に黒の蓋碗は、朱色の蓋碗を籾殻にいれて一昼夜やきあげるのだとか。だからその分若干値段が高いのです。

蓋碗の大きさはやや小さめ。蓋碗本体の最上端までの容量が約130cc。蓋までが90cc程度ですので、茶葉を淹れるとちょうど茶杯に3~4杯分というところでしょうか。

緑茶でも青茶でも、この蓋碗は対応可能です。そのときの気分に応じて、そのまま茶杯にするもよし、茶壷代わりにするもよし。とても扱いやすい蓋碗ですから、おいしくお茶を淹れることができるでしょう。

■ 錦園
店主:石部健太朗
住所:静岡県静岡市葵区山崎2-8-3
電話:054-278-6895
HP:http://www.nishikien.com/


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