そう、香港では、ポットの蓋を取って、口と取っ手の間に置くことが、服務生さんに「お湯を足して下さい」という意味なのです。ですから、テーブルの上にポットがこんな風に置いてあるのを見かけると、服務生さんはすぐさま湯を注いでくれるのです。これを広東語では「掲蓋添茶水(ギッ ゴイ ティン チャア ソイ)」といいます。
では、なんで、ポットの蓋を半開きにすると、お湯を足してくれという合図になったのでしょうか。老地方茶坊の見聞さんに聞いてみると、面白い由来があるのがわかりました。
その由来は、清の時代に遡ります。広東省の海珠北路あたりにある悪党が居ました。悪党は、自分の叔父が国のお偉いさんである事を利用し、理不尽な事ばかりしていました。ある日悪党はバクチを打って、大損をしてしまいました。帰りにある茶樓に寄ったとき、悪智恵を働かせ、小さい鳥を急須の中に入れて蓋をしました。ウエーターが湯を注ぎ足そうと、テーブルのポットの急須の蓋を開けたとき、その中から小鳥が飛び出して、逃げてしまいました。悪党は、その鳥がとても高価な鳥である事をふれまわり、小鳥を逃がした責任をとれ!と、店に多額の弁償を要求して来ました。泣く泣く、店の主人は悪党にお金を払いました。
その事件の後、店の主人は同じようなトラブルを避けるため、お茶やお湯を足して欲しいお客さんには、自分でポットの蓋を開けるように求めるようになりました。その話を聞いた他の茶樓でも、おなじように真似しはじめたので、急に広がるようになりました。今では、その習慣だけ残って、ポットの蓋を取って、口と取っ手の間においておくと、お湯を足してくれという合図になったそうです。
香港などで飲茶をしつつお茶を飲むときには、この作法をちょっと思い出してみてくださいね!
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