世界的には高値を付けた紅茶価格
国際連合食糧農業機関FAOは、昨年末の12月22日に、2009年は紅茶価格が高騰した一方、2010年は価格が安定へ向かうとの見通しを公表しました。また、生産者が2009年の価格に反応し、過剰供給に陥る可能性があるとも指摘しました。一方、日本の紅茶価格は一時上昇しましたが、不況のなか、改めて低下しつつります。本日は、FAOの記事を中心に紅茶の市況についてレポートします。
FAOが計算し、公表している紅茶の価格指数によると、2009年9月に紅茶価格指数は1キログラム当たり3.18ドルと、歴史的な高水準に到達しました。2008年平均では1キログラム当たり2.38ドルでした。価格が高騰した要因としては、インド、スリランカ、さらにはケニアという主要生産国において旱魃が発生する一方、紅茶への需要が堅調だったことがあげられています。2010年には、天候が通常のパターンに回復すると見込まれることから、価格は低下していくと見通しています。
世界経済は、2009年中は不況だったのですが、にもかかわらず紅茶の需要が堅調に推移した理由として、FAOは、おそらく嗜好品としての性格が強く現れ、所得が低下しても、消費者が紅茶の消費を減らさなかったのではないかとしています。
また、FAOは、茶畑を開墾するためには、最低3年程度の時間がかかるため、供給が需要に追いつかず価格の高騰が一定期間続いてしまう一方で、今後は高価格に反応して生産者が過剰に投資を始めることに懸念を示しました。また、インドなどが茶園の作付面積の拡大を意図した投資を行わない旨、意思表明したことを責任ある行動として評価しました。
先進国の消費者への影響は限定的
価格高騰の先進国の消費者への影響ですが、FAOは飲料市場全体の競争が厳しく、価格転嫁はあまり進まなかったとしています。ただ、欧州では、スーパーで販売される紅茶価格は5%程度上昇しました。一方途上国では、紅茶の調達価格が小売価格のかなりを占めるため、相当程度、価格の高騰が転嫁された模様です。2009年9月の小売価格は、インドでは前年同月比15%に価格上昇となり、パキスタンでも12%の上昇となりました。
FAOは2010年には天候が通常のパターンに戻ると予測されているため、紅茶の国際価格も低下していくとしています。
日本国内ではデフレの影響
なお、日本国内の紅茶価格の推移を消費者物価指数の個別の商品価格指数で確認すると、2009年の年初は国際価格の推移を受けて上昇したものの、その後の円高やデフレ局面の中でかなり低下してきていることが分かります。消費者としては安ければ安いほどうれしいのですが、供給者が倒れるような事態になってしまえば、消費者としても困ってしまうので、価格の安定が望まれます。
日本におけるスーパーなどで扱われる代表的な紅茶の価格の推移。 |
■参考資料: UN NEWS CENTRE