世界中で飲まれる茶。茶を通じて見る世界、世界史からは人間の最も基本的なつながりのあり方が浮かび上がってきます。なお、ここでいう「茶」とは広義に解釈するもので、ハーブティーやルイボスティー、マテ茶など、ありとあらゆる「茶」という名のつく飲み物を指しています。

ヨーロッパの茶文化、日本の茶文化を両面から分析し、茶のもつ共通の精神について語られた本『茶ともてなしの文化』をご執筆された角山 榮先生に、過去から現代へ、日本とヨーロッパの茶文化をご覧になって、「茶」と、「茶」を通じて人間同士がどう関わるべきかお話を伺いました。それでは、先生のお話のポイントを以下で紹介します。

ふれあいともてなしのお茶の心はひとつである。茶は信頼関係を生む、平和を生むと強調されます。

茶という嗜好品のもつ性格

茶というのは東アジア発の現代に残る嗜好品のひとつです。茶は中国から日本に渡り、また、ヨーロッパに渡り、グローバルな飲み物になりました。茶はなぜ長い歴史を経て現代に残っているかといえば、これが人間文化であるから。ヨーロッパ人が日本に来たときに、日本の文化に触れ、感激しました。感激したのは茶の味に対してではありません。茶の文化に魅せられたのです。決して茶を美味しいと感じていたわけではないと思います。

茶がもたらした文化とは?

ヨーロッパで紹介された茶は、特に、イギリスで花開きました。ほぼ同時期にイギリスへ入ってきたコーヒーは男性社会に受け入れられたのですが、家庭に入って女性の飲み物となったのは紅茶でした。日本と同じように茶寄り合いの文化ができ、イギリスではやがてアフタヌーンティーの習慣の形成へつながっていったのでした。さらに、陶磁器文化、礼儀作法も一緒になって今やイギリスを代表する文化へと発展していったのです。そこに存在したものは、茶を通じて起こる社交でありました。

日本で確立された茶の湯の文化においては「わび・さび」が精神文化の極致として位置づけられていますが、日本の茶の湯に触れた西洋人がそこに見出したものは、人間の相互の信頼関係の形成にお茶が大きな役割を果たしていたということでした。それは「もてなし」の文化でありました。

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ヨーロッパの茶文化、日本の茶文化研究の大家が説いた茶の文化論。

これからの茶の心について

お茶を飲まない民族はありません。民族により伝統、飲み方も異なり、茶は多様な飲み物として展開されています。茶は健康飲料として脚光を浴びるだけでなく、コミュニケーションツールとして文化を支えます。この相乗効果で茶の文化が成り立つのです。

茶は世界文化です。茶のもてなしの心に注目して、近年ではホスピタリティー産業のありかたが経営学で見直されるようになってきました。また、身近なところでは茶を通じて起こる友人・知人との社交、共通の趣味を持つ者同士の交流の場であります。人間は一人では生きていけません。新時代の「茶の間」の形成・成立が必要です。人間同士のコミュニケーションのために、茶が求められています。


以上が、角山先生へのインタビューのポイントです。『茶ともてなしの文化』の後半には茶を通じてのもてなしの心やふれあいの心について主張されています。そして、本書に共感を覚えた多くの人、これからの社会をどのように生きていくか真剣に悩んでいる女性たち、もてなしの心が西洋社会でのSociabilityとして受け入れられるものであると発見した出版関係者などが先生のところを訪問されているそうです。

以前、角山先生のお宅に訪問した際に、先生自らお茶を入れてくださいました。張り詰めた緊張感も少しほぐれ、お茶を囲むことでその空間が不思議と和んだのです。インタビューを終え感じたことは、私たちの持つ日本の茶文化も、イギリスで確立された紅茶文化も、世界中で飲まれる茶にも共通のもてなしの心が流れているということでした。

角山先生にはさらに紅茶文化、特に日本の紅茶文化について語っていただきました。これについては後に掲載する予定です。
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