パンの味をつくる野生酵母と発酵の過程
粥状の小麦種を入れた壷を持って、秀島さんは年に4回、店の近くの緑地に酵母の採取に出かけます。 使用する水は岡山の湧水、その名も素敵な「夏日の極上水」。パスティスをこの水で割って飲んだり、木陰で昼寝をしながらゆっくりと野生酵母の着床を待つのだそうです。そういう過程でつくられたパンだから、あんなにゆたかな味がするのでしょう。
「発酵の時間にパンのほとんどは作られます。パン焼きの中で人間が担う役割はほんの一部分。だから製造中に温度や湿度の管理を厳密には行いません。すべては自然のままに。自然の一部を借りるから、僕にとってのパンは面白い」酵母を膨らますために使うというより、熟成とか醸造と捉えている秀島さんは、発酵には人一倍の想いがあるようです。
酵母を採取する後楽園周辺の緑地。生命力に溢れる緑、湿った土、枯れた葉の香り、酵母の気配。 | 工房の秀島さん。カンパーニュにクープを入れる、パンの仕上げのひと仕事。 |
七輪で愉しむライ麦パン
秀島さんが最近気にいって、サイトでも勧めているパンの食べ方。それは七輪で焼くことです。チーズやチョコレートとワインで洒落込んだり、ホルモンや骨付きカルビと焼酎をあわせてしまうあたり、やってみたくなる人も多いに違いありません。七輪でドイツパン。つめたいバターを削ってのせて。 |
じっくりと火を通したライ麦パンも、なかなか良いものです。 こんがり焼けた五穀米のドイツパンにバターをのせて、そのままでひとくち、それからレモンを絞ってひとくち。全粒粉のカンパーニュにはブリやアンチョビ、野菜をのせて。おいしい食べ方をまたいくつかおぼえました。これからの季節に、わたしからもおすすめです。
新しいスタイルのデパート
岡山のカフェに卸しているパン。奥は発送を待つ四季のカンパーニュ。 |
いかがでしたか。前編の冒頭に「パン屋さんらしからぬ」と書きましたが、ナショナルデパートはやはりパン屋さんだと確信したので、誤解のないようにここに書いておきます。ただ、ナショナルデパートの持つ夢は大きく、わたしはまだその全体を把握できておらず、地下食品売り場をうろうろしているような状態かもしれません。
魅力的なものづくりをするひとは、その過程もマニュアルに沿うものではなくオリジナルであったりします。デザインによってさらなる意味を持つ、心あたたまるメッセージを伝える作品が並ぶところが秀島さんのデパート。今後の展開が楽しみです。
取材を終えて東京に帰ったわたしは、ナショナルデパートのウェブショップを再訪、発売になったばかりの「めくるめく食事パンセット」というのを注文しました。次はその内容と感想をお伝えします。→続いて「めくるめく食事パンの世界」を読む
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ナショナルデパートショップデータ
めくるめく食事パンの世界