ZOPFの伊原やすともさん、りえさんを講師に開催されたパン業界で働く女性のための会クラブ ド サントノーレの第3回目のセミナーの内容を連載でお伝えしています。ZOPFに学ぶパン作り、ZOPFの人気パンの裏側に続き、この記事ではZOPFの考える女性の仕事についての、りえさんお話をレポートします。 女性パン職人の厳しい現実
「パン業界で働く女性に向けたサントノーレの活動には大変共感を持っています。男性社会だったパン業界に多くの女性が登場し、大きな変化をもたらしているのを実感しますが、長期に働くことができる女性は少なく、体力的な問題や結婚、出産などで泣く泣く業界を後にする者も多いのが残念です」 元看護師、二人のお子さんを育て、いまはZOPFの37名のスタッフの教育係でもあるりえさんは言います。 「パン職人をしながらの出産や子育ては大変です。 ”先に子供を産んできます!”と戻ってきたい気持ちを持って辞めていくスタッフもいます。 このセミナーに参加されている皆さんに言いたいのは、結婚や出産後の復帰をあきらめないで、ということです。わたしは子供が生まれてから、両親を含む家族みんなの三度の食事を10年間作っていましたが、おいしいものを安く食べさせるにはどうしたらいいか、食材をどうまわしたらいいかなど、やりくりしたり手際よく料理を作ったことは、今とても役立っていると思います」 ZOPFにおける女性の役割「女性ならではの能力を発揮し、男性と同等の立場を確立させることが、ZOPFでの女性の役割だと思います。フロアでお客様に気を配ったり、細かな雑用をこなしたり、お 店を飾ったりすることに女性スタッフは素晴らしい能力を発揮します。 それらがなくては店は成り立たない大切な仕事です。ZOPFではそのことを全員が理解しあっていると思います。だからそれぞれの持ち場で誇りと責任をもって仕事に向き合ってくれているのです。その結果、とてもいい店を作りあげることができていると思います。 世の中には男性に付属する立ち位置に甘んじ、責任を持とうとしない女性もいるかもしれませんが、自立しない者が存在すると、ひとつの社会としての店は成り立ちません。女性ならではの能力は活用し、大事な役割を受け持って仕事をする!それが健全な社会を形成する基本だと思いませんか?決して男勝りに向こうを張って頑張らなきゃいけないというわけではないんです」
ZOPFの研修所計画人気店ZOPFには毎日たくさんのお客さんが訪れます。やすともさんは、並ばずにゆっくりパンを買ってもらえたらと願うものの、いまのキャパシティを超えると目が届かなくなるので、店を大きくしたり二店めを出すことは考えていないそう。「自分たちがいなくなればZOPFはなくなるという考えでいいと思っています。でも今、ひとつの計画があります」 その計画とは、パンの研修所。ZOPFには日々国内外から修業や開業の相談が来るので、パンを教えられる場を作りたいとの思いから簡易宿泊所を併設した研修施設の建設計画が進んでいます。 りえさんは施設のこんな利用法を考えています。 「パン屋でなくてもパンの仕事に携 わっていけるような場を作り、結婚や出産で家庭に入った女性スタッフが、 パン教室の先生やアシスタントとして技術を発揮できる場にしたいです。 これから先、もしパン職人の修行にくじけてしまっても、ノウハウを身につけていたら家庭で小さなパン教室が開けるかもしれない。パンに関わるチーズやワインのお教室もいいでしょうね」夢はひろがります。 「パン屋さんどうしの交流もできたらいいよね。意見交換をして技術を高めあったり、商売ぬきで関わりあえる場所。おもてに石窯をつくって生地を持ち寄って焼くというのも夢ですね」というやすともさん。来夏には完成予定なのだそうです。 次回はセミナー後の小さなパーティのテーブルに並んだZOPFのパンとFixing、チーズ のお話です。 【関連記事】 クラブ ド サントノーレ 【第一回】志賀勝栄さんに学ぶ 【第二回】いがらしろみさんに学ぶ 【第三回】ZOPFに学ぶ |
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