南葵文庫に震える心
翌日は天気がいいと聞き、朝は6時の暗いうちからベランダでだんだんと蒼くなる空を眺めていた。すこしづつ、すこしづつその蒼さにオレンジの色が入り込み、「あっ!」と思った瞬間に小さな太陽が水平線の彼方に顔を出す。そこからが早い。あっというまに夜が明けて眩い陽射しが白い部屋に入り込む。天気がいい朝は目覚ましを夜明け前にセットしたい。 |
その光景を目に焼き付けて、さあ、朝風呂だ。走り湯までの石段は長かったが、湯船に浸かった瞬間にそんなことは忘れ去り、だんだんと沸いてくる朝食への欲求が沸き起こる。
朝のダイニングには絞りたてのオレンジジュース、ハンドメイドのジャムがいくつも並び、圧巻は「メインディッシュのクラムチャウダー」。お代わりができるなら2杯はいけだだろうか。シャンパーニュを飲みながらの朝ごはんはこの上のない贅沢。
採りたての瑞々しい野菜サラダ |
華美なもてなし感がないのが心地よいのかも知れない。つかず離れずのサービスに静かなプロフェッショナリズムを感じる。マニュアル的ではない、しかしツボを押さえたひと言にゲストは和むに違いない。
毎朝多くの料理人が野菜を摘みにやってくる。 |
話は前日の夜に戻るが、ディナーが終り、星降る夜の空を肴に部屋にあった坪田茉莉子著「南葵文庫」という本を読み始めた。明治の時代に麻布飯倉にあったその図書館の歴史を紐解いた、その当時のアカデミックな様子を散りばめたいわばマニアックな歴史書。読み進むにつれその面白さに惹かれ、あっと言う間に「あとがき」にたどり着いてしまった。
その瞬間、私は全身が震え、気持ちは激しく高まり、言いようのない興奮につつまれる。著者に対し、南葵文庫について多くの情報を提供したという中に、元麻布に住む尊敬すべき亡き叔父、当時東京学芸大学名誉教授、小泉清明の名があったからだ。先生がいなければ今の私はない。ただ波の音だけが聞こえる夜に、まさかここで先生に会えたとは!これも何かの縁なのか。
サロン入口には徳川頼倫直筆の書が飾られる。 |
料理、温泉、歴史的建築物、ホスピタリティ。いや、それ以外に何か気持ちを和ませる「気」を感じるヴィラ・デル・ソル(太陽の館)。季節を問わず訪れてみたい。
「女性のためのグルメ情報」ガイド、河野優美さんも夏のヴィラ・デル・ソルこちらで紹介されている。ぜひご一読いただきたい。
ヴィラ・デル・ソル (VILLA DEL SOL)
静岡県熱海市伊豆山759
TEL 0557-80-2020
地図
営業時間
ランチ 11:30~14:00
ディナー17:30~20:00 ※要予約
無休
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