目指すべきワインの姿
「嶋さん、私が造りたいワインはこれなんです。」と一本のブルゴーニュの白ワインが用意されていた。リゾナーレのメインダイニングであるリストランテ、
オットセッテで味わうそのワインはブルゴーニュのシャルドネ。そのワインはコルゴロワン村でオー・コート・ドニュイやACブルゴーニュを生産するディディエ・フォネルのニュイ・ヴィラージュの2005年だった。
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緩やかな斜面がどういったワインを産み出すのだろうか |
「エレガントで、穏やかだけど味わいはしっかりとしたワインを目指したい。」と話す池野さんがモデルとするニュイ・ヴィラージュの白ワインは、ひと言で表現すると丸いワインだ。角が取れていて、でも香りは高いけれども穏やかで、果実味と樽香のバランスがよく、確かに飲み易い。さらに付け加えるとしたら飲み飽きないワインだ。名前の通り高級ワインではない。日常ワインよりちょっといい部類だろうか。この丸いワインを味わうことによって池野氏の目指すシャルドネ像がほんのりと見えてくるのがとても楽しい。
ちなみにこのワインはリゾナーレでのみ楽しむことができる。
フランス料理に合わせるとしたらこの季節の野菜系のテリーヌやムール貝のマリネ、ビネガーを効かせたサラダなど、ワインと共に味わいは大きく広がっていくだろう。
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まだ実の小さいシャルドネ |
本来ワイン作りは気の遠くなる作業の連続だ。これまでは勝沼の著名なワイナリーの醸造所で委託生産していたが、2010年に自社で生産できる醸造所が完成する。最初のリリースはもちろん待ち遠しいが、これは単なるスタート地点に過ぎないことは関係者は皆わかっているはずだ。最初の年から完成されたワインなどできるわけがない。大切なのは最初のリリースに向けて仮説を立てた香りや味わいが感じられるかどうかだろう。
ワイン作りは長く、そして深い。前出の甲州ワインだってそうだ。失敗や成功を繰り返し、今や世界に輸出されるようになるまで長い長い年月が積み上げられている訳だ。