フレンチ/全国のフレンチ

パティスリー・カミーユ(長崎)(2ページ目)

稀代の料理人、上柿元勝シェフが満を持して開店したお菓子の世界。シンプルが故に奥の深い世界が、ここ長崎から発信される。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

ショコラ・カミーユ

店の名前にも使われている「ショコラ・カミーユ」は一番人気だ。アーモンド風味のスポンジの中にほんのり酸味のあるフランボワーズのソースと生クリームが層になっていて、全体をホワイトチョコで覆っているもの。スポンジがあるの?と思うくらいフワフワで、スーッと溶けていく。生クリームやホワイトチョコのベタベタ感が全くなく、とにかく軽い。このケーキのポイントはスポンジ、クリームとソースの割合なのだそうだ。甘くなく、酸っぱくなく、重くなく、それでいて後味が鮮烈に残る、これぞザ・デザートではないだろうか。
デザート
気品漂う「作品」だ。
カミーユのショートケーキはシェフの料理哲学の象徴といえるだろう。それは自然の命に感謝するということ。「時間が経つとスポンジの中のクリームにイチゴが染み込んでピンク色になってしまう。それじゃイチゴがかわいそうじゃない、イチゴを頂くわけだから綺麗にしてあげないと」とシェフ。その途端、真っ赤なイチゴが一際輝く大切なお嬢様のように見える。この長崎のお嬢様はとっても甘くて沢山の生クリームは必要ない。ほのかに酸味が感じられるふわっと軽い味わいだ。

ほろ苦さがたまらないショコラケーキだが、カミーユでは2種類のクラシックショコラがある。「グリオット入りでお願いします」と注文するとブランデー漬けのチェリー(グリオット)がサンドされてくる。別名フォーレ・ノワール(黒い森)と呼ばれているそうだ。ほろ苦いチョコの味とブランデーの香りが何ともエレガント。「私、甘いものは食べないけど、これだけは時々食べたくなるの」なんてカッコ良くオーダーしてみたい。

安全・安心な材料しか使わない姿勢は不変だ。数種類あるマカロンも色素を使わず素材の持つ色がそのままで、ピカピカした派手さはない。全て手作りのため季節のフルーツを使ったケーキは7種類ほどで一日に各30~40個ぐらいしかできないが、毎日売り切れてしまうそうだ。
マカロン
上柿元マカロンは食べ応えも十分
 
自然の命に感謝、火があること、食器、そしてお客様に感謝がモットーのシェフが創り出すケーキはシンプルでスマートだ。そしてそこには言いようのないエネルギーがある。

ムッシュはこう話す。「レストランのレストはフランス語で元気が出るという意味なんですよ。だから僕のケーキを食べると元気が出るんです、力が出るんですよ。」そうか、デザートを含めた料理はすべて人間の力になるものだ。ひとりでファーストフードが悪いとは言わないが、人が集まるレストランはエネルギーに満ちている。そこに極上の料理があれば元気が出ないわけがない。
上柿元勝
料理人に定年はない。活き活きとしたムッシュの瞳がとても印象的だった。

■パティスリー・カミーユ
長崎県長崎市茂里町1-55 ココウォーク1F
095-801-5327
予約の際に店内で召し上がる料理を注文することもできるとのこと。詳細はお問い合わせいただきたい。
営業時間 11:00~20:00 
定休日 火曜日

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