不思議な盛り付け
毎回のことだが、特に見せ方はアイデアに満ちている。今回のシェフ、アレクサンドル・ゴティエ氏は皿の中央に料理を盛らない。左に寄ってるのだ。ディナーの前菜の一つ、アボカドと真鯛のマリネが運ばれてきたらちょっとは驚くだろう。右側が空いていて、あとから何か盛られるのだろうかと思ってしまう。醤油に漬けたキュウリの微塵切りが添えられる。これは明らかに漬物だ!!と思うのだが、これがアボカドと一緒に食べると意表をつく味わいに「!」となる。料理は左に位置しているのがとても不思議に見えるのだが。。。 |
ランチの前菜の一つ、ジャガイモ、ガーリックのグラス、ヴィネグレットのフュメもそうだ。微妙に軽く火を通したジャガイモに添えられるガーリック風味のアイスクリーム。意外な食感に絡むガーリックの風味、そして味。もしも私が料理人ならばこういう見せ方があったのかと、何かに応用を考えたいところだ。
ガーリックのアイスが溶けてソースになるところが面白い |
汐の香りのするアミューズはフランス北部の海をそのまま持ってきたかのようだ。スズキやアサリがまとめられた中に、ワカメやノリやレモンを入れた「水」を浸すと、そこはオー・ド・メールになる。不思議な味わいだ。スープと呼んだらいいのか、その「海水」はダシが効き、器が和食器ならばこれをフランス人が作ったかどうかを見分けることはできないかも知れない。この料理がフランス人に受け入れられていることが私には驚きだ。
海草の香りがほのかに漂う |
プーレ・ロティ、つまり鶏肉のローストは一見平凡な、まさに普通のプーレ・ロティでしかない。ところがナイフを入れたらびっくり。○○○が出てきたのですよ。しかしこれがまた旨い。魚卵系が好きな私としてはこれがフランス料理かどうかなど吹っ飛んで、塩加減を緩めにローストされた鶏肉の中には海の味わいをしたためた○○○によって味わいのバランスがとられる、そんなことを意図した料理なのだそうだ。
この中に隠されているものは食べるまでのお楽しみと言うことで |
シャンパーニュ・アンリオのあとはプロヴァンスの白ワインを。セミヨン種が含まれたワインは味わいの変化が十分に楽しめるお薦めの一本。ボルドーの赤ワインもホールマネージャを務める常盤氏がかつて働いていたシャトーのもの。感慨深くワインを注ぐ姿は印象的だが、もちろん味もぎゅっと締まっていて心地よいものだ。