元横綱とのコラボデザート
さて、その日のデザートは好奇心に溢れたものだった。オードブルとしての最初の一品は相撲界は芝山親方(元横綱 大乃国)とのコラボと書かれた摩訶不思議なもの。詳しくはシェフのブログをご覧いただきたい。「ブラックタピオカ入り 甘く煮た肉厚椎茸と梅酒のゼリー寄せ&青紫蘇をまとった紫蘇焼酎のグラニテ添え」。
上品な甘さが大人の味わいを奏でる |
シロップで軽く煮詰めた椎茸が面白い。本の僅かに感じる椎茸の味わいが梅酒のゼリーとほんのりと重なるその瞬間、これまた微妙に青紫蘇がふわりと味覚に春の香りを運び込む。椎茸という伝統的な日本の食材がアイデアと技術によってフランス料理のデザートに変身する瞬間に少し嬉しくなる。
メインのデザートもアイデアに溢れたものだ。
「フルーツの焼き立てパピヨットにレモンとオリーブオイルのジェラート」。
香りも味もすべて閉じ込められたところから始まる |
これは包み焼きになったものをハサミで切り、中から沸き立つ香りをまず楽しむ。そしてそこにレモンとオリーブオイルのソルヴェを載せて、溶かして、そこから拡がる香りや味わいを楽しむもの。そこにバナナの風味をつけたホットワインを添えられる。
切ったり入れたり混ぜたりと、いろいろとやらなきゃならないのだが、食べてみると実に美味なのである。メインデザートに相応しいボリュームと濃厚さ。そして様々なフルーツやガトーが溶け合い、そこにオリーブの風味が忍び込む。
オリーブオイルの香りに味覚が驚く |
確かにミラヴィルの都志見シェフの料理の特徴は様々な味わいの重ね合わせによって新鮮な驚きをもたらすもの。その点がミシュランに評価され、2年続けて星を維持している理由なのだとは思うが、こうしたデザートにもそのクリエイティヴィティが十分に発揮されていることは間違いない。インパクトのシェフ、神河茂氏は都志見シェフの薫陶を受け、忠実にそのクリティヴィティを継承し、そして実現していると見ていい。
とは言え、ここはカジュアルなデザートレストラン。目の前に出てきた見たこともないデザートをあれこれと話題にしながらバレンタインデイを語り合うのも面白いかも知れない。これは決して持って帰ることのできない、ここでしか食べられないデザートなのだから。