言葉も出ない必殺クロケット |
一撃で仕留める必殺クロケット
必殺技とはこのことか。フォアグラとトリュフのクロケット。一口サイズの見た感じなんの変哲もないクロケットを口に含み、崩したその瞬間に人生が変るかも知れない。うーん、この美味しさを表現できないとなるとフレンチガイドも情けない。身体がふわ~と浮き上がり、味覚だけが独立して空を彷徨い、どんな美女と一緒に食事をしていようが会話は途切れ、自分と料理が一対一になったままフリーズ。フォアグラはソースと溶け合い、余韻の長さといったらもう有得ない位長い。私は翌日の朝、いや、3か月経った今でも香りと味わいを思い出す。力道山なら空手チョップ、ジャイアント馬場ならコブラツイスト、アントニオ猪木なら卍固めという位の衝撃だ(ちょっと古いか)。
濃厚な料理に見えて後味は軽やかだ |
秋になり、白子のムニエルとセップなどのキノコのソテーをいただく。これが前菜ならメインは何かと言うくらい強烈、なのだが白子の味わいは優しく、それをキノコ達が秋の風味で包み込み、白ワインがさらりと流れ落とす。一皿にちゃんとストーリーがあり、それが自然と伝わってくる楽しさ。
マダムの笑顔が極上のソースかも知れないが、実はコース料理をオーダーするときにはマダムと一緒にメニューを決めることになる。プリフィクスではないが、その時々のお薦めの中から選んでいくのが実に楽しい。うーん、あれよりもこれ、やっぱりこっち、あんたはあれにして、私はこれ、とかそんなやり取りがあるのだろうか、忙しいマダムを独占する気持ちを抑えつつ、忙しさを言い訳にする私たちは、食事のときくらいメニューを決めるのにもっと時間をかけてもいい。
フォアグラが特に印象的だ |
付け合わせのドフィノアも一枚一枚しっかり重ねられ、小さなラタトゥイユも口直しに心地よいアクセントを添える。