料理教室
今もあの頃と熱さは変らない

ダニエル・マルタン

彼に初めて会ったのは多分98年位ではなかっただろうか。表参道にあったカフェデプレの隣にスプーンというカフェ・レストランがあり、確か不二家の血筋の方が経営されていたと記憶しているが、そこのプロデュースと総料理長を兼ねていたのがマルタン氏であったのだ。

何度か会食やパーティーで使わせていただいたが、料理はなかなか良かったことを思い出す。しかし、その後間もなくよくある経営陣のゴタゴタから店は閉店となり、彼は店を経営する道から、これまでの自分のノウハウを活かした店舗プロデュース、そして料理を伝承させる道を進み始める。なんと言っても1987年に銀座「マキシム・ド・パリ」料理長として来日し、その後代官山「ル・コルドンブルー パリ東京校」校長まで務めた料理人だ。器用にフランス料理の伝道師としての役をこなし、現在も引き気味のポジションからフランスのエスプリを伝えるべく活動を続けている。

フランス料理
パーティー料理も気合十分
久しぶりにお会いしたのは、2008年6月に彼自身の料理本「フライパン1本でできるお手軽フレンチ(サンマーク出版)」の出版記念パーティーの時だ。その本はタイトルの通り、彼がレストランで、つまり仕事として作っている料理を家庭で出来る範囲でわかりやすく作れるように限りなく配慮をしながらまとめられたものだ。

最初、表紙や写真の色合いが少しくすんで見えて、くっきりはっきりとした昨今の写真とは一線を画したヴィジュアルに戸惑ったものだ。右手に写真、左手に解説というシンプルな構成と、段取りよく手順が示された写真を見ると、これは気合を入れて作ってみようという気になる。

フランス料理
手触り感も心地よい
そうなったときに感じたのが写真のくすみ加減。ヴィヴィッドな絵を見ると、美味しそうだが自分で作るにはどうかな、という気になりがちだが、不思議とそれがない。落ち着いた写真のトーンが、現実的に料理を作るという欲求を自然流れで押し進めてくれるのだ。でしゃばらない、引き気味な感じが見慣れてくると妙に落ち着いて見えてくる。

ただし、いきなり本を読んで作ってみようと思ってもなかなか思い通りにいかないだろう。火加減や馴染ませるタイミング、調味料のちょっとした量が味に大きく影響されるが、これはやりながら試行錯誤するに限る。だってそこが料理の楽しいところであるわけだから。調理に近道はないどころか、楽しい迷路に入っていくとしたらワクワクドキドキではないか。