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素材と技術を超えるもの(フードフランス)

今回のフードフランスはさすが08年度本場フランスミシュラン二つ星レストラン。素材、技術の他にとても大事なものがあると気付かせてくれるでしょう。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

フランス料理
ランチ前の緊張の場面

「自分ちのキッチン以外で初めて料理を作ったよ」

いつも最新のフレンチガストロノミーを運んでくるフードフランスはすっかり定着し、日本の料理人やジャーナリストも私的に足を運ぶようになったようだ。

08年度フードフランス第3回目の料理人はローヌ・アルプ地方から初めて日本にやってきたルネ&マキシム・メイユール親子。親子での登場も初めてだ。

ルネは「自分ちのキッチン以外で初めて料理を作ったよ」と「窓から見えるビル群は、いつも眺めているアルプスの山々とは大違いだけど、また別の刺激があってそれはそれで気持ちがいいねえ」と語る。

フランス料理
なんとも笑顔が素敵な親子だ
ルネ&マキシムが経営するホテル・レストラン「ラ・ブイット」はフランス屈指のスキーリゾート「サン・マルタン・ド・ベイヴィル」にあるロッジスタイルのオーベルジュだ。03年にミシュランの一つ星、そして08年に二つ星を獲得した、今非常に勢いのあるレストランかも知れない。

「星が増えて何が変ったか?」と聞くと「初めて星を獲った前の年に子供が生まれて、二つ目の星を獲る前の年にも子供が生まれたんだ。「これは単なる偶然ではないよね」とにこやかに笑い飛ばす。私も「じゃあ、あと5年位して3人目の子供が生まれたら翌年は三ツ星だ!」というと親子揃って「わっはっは」。実に明るく、屈託のない姿に、日本の料理人とのユーモアのセンスやおおらかさの違いを少しばかり感じてしまう。

「フランス人は何故こんなに明るいのか?」まるでほんのタイトルのようだが、フードフランスで選ばれたシェフに共通するのはここなのだ。

料理の特徴はこれまでのフードフランスに順位をつけるわけではないが、特筆すべき作品が並ぶ。それは余計なものをすべて解きほぐし、シンプルと言う非常に困難なテーマと向き合う。その先には人間が持つすべての味覚を超越する味わいの世界が広がる。素材、技術、そして何より大事なものはそれを作り上げる家族の力、愛情だ。
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