フレンチ/オーベルジュ

帯広と美瑛、そして(北海道)(2ページ目)

旅は岡山、高松、島原、熊本から一気に北海道は帯広に飛びます。雄大な自然の恵みに包まれたその料理はこれまで出会ったアスパラの中でも最高とも言えるものでした。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

北海道
モダンな外観が特徴だ

大草原の中で地のフレンチを

新田牧場という広大な土地の片隅にひっそりと浮き上がるコムニは5月から9月までの営業だ。現在北海道は洞爺湖サミットで沸いているが、ウインザーホテル洞爺が最高級リゾート、真狩村のマッカリーナが食に特化した個性的なリゾートだとしたら、コムニはそのどちらにも所属しない、口コミとネットだけでひそひそと言い伝えられる至高のリゾートか。

部屋は10室。すべての窓に目の前に広がる大草原が迫り来る。緑の世界にモノトーンの建築はまるで安藤忠雄の世界だが、中にいるとプライベート感よりも草原の中の豪華コテージを独り占めしているような錯覚に襲われる。

鳥の声と風の音。

揺れる牧草と木々の枝葉。

都心のビルの中で生活する私たちを、あざ笑うことなく子供の頃走り回って遊んだ時代にすーっと戻してくれる。

シャンパーニュ
昼間の泡は格別だ
午後のひと時をテラスで過ごす。シャンパーニュの煌きは陽射しと重なり、草原の緑と一体になる。たわいもないトークが妙に新鮮で気がつくと何本も空いているのになかなか酔いが回ってこない不思議さ。

夕食までのひと時はゆるりとした昼寝。スペインやイタリアの人々は毎日こんな生活なんだろうか、と夢にまで出てくる位まどろみは深くなる。

サウナの後は草原の片隅に置かれた五右衛門露天風呂で汗を流す。周りに誰もいないのが逆に違和感を覚えるほどだ。それだけ私が自然に溶け込めていないということだろうか。
フランス料理
新鮮なホッキ貝を野菜のソースが引き立てる
ディナーは暮れかかる空を眺めながらスタートだ。まずは紋別産ホッケのマリネから。ホッケは普通焼きものとしていただくのが普通だが、新鮮さを活かすためにマリネで登場。ふにゃっとした食感のあとにホッケだな、と感じる味わいがギリギリの状態で湧きあがる。

苫小牧産ホッキ貝のソテーに音更産のホワイトアスパラと新玉葱。玉葱のソースが印象的でホッキやアスパラにほんのりと纏わりつく。平目のプレゼにもカブやサヤエンドウなど野菜がしっかり。単に素材の持ち味に頼らずにメリハリの効いた味わいが連続する。それぞれの皿に合わせたワインのセレクションも申し分がない。

メインは、今やブランド牛となった十勝牛。ローストされた極上肉はサシよりも赤身の肉質で勝負。ぎゅっと噛むと味わいがぐぐっと広がり、マディラソースの余韻と共に食のクライマックスを迎える。

フランス料理
実に味わいのある十勝牛
デザートンのフルーツグラタンもしっかりとした味わいに柑橘類の爽やかさが加わり、長い夜のひと時の中締めの時間がやってくる。

コムニの夜は長い。星が出ている夜は星しか見えない。煌く夜空を見上げつつ、こうした自然なことからいつしか遠ざかっていた自分。東京には夜空はないから仕方ないのかも知れないが、昔は毎日がこうだったのだ。年に一度くらいは思い出さないといけない星の煌き。星のない夜は闇よりも暗い闇が広がる。鳥の声は明日を夢見、聞こえるのは夜の虫の静かな合唱。

北海道
早起きして霧の中を歩きたい
そして朝はゆっくりとやってくる。それも深い霧と共に。単に幻想的と言い切れない深い霧。しかしそれも地の産物を散りばめた朝食と共に静かに静かに晴れてくる。霧の晴れていく様子はこれから始まる一日の幸運を予感させるものに思えてならない。
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