フレンチ/フレンチ関連情報

フードフランス(京都から来た料理人)(2ページ目)

アラン・デュカスが惚れ込んだフランス懐石と町家の空間。08年度フードフランス第1回目は京都から奥村直樹シェフの登場です。「いや、実に旨かった!」。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

フランス料理
一つひとつにほっとする味わいが隠されている

奥村直樹のフランス料理

アミューズには一つひとつに何か懐かしい味わいを感じる仕掛けが満載だ。焼茄子にオクラ、そこにほのかなジンジャーが添えられる。白アスパラには黒ゴマのソースだ。個性の強いソースだが、決してアスパラの風味を殺すことはない。白アスパラが持つ甘みと苦味はほんのりとしたゴマの味わいに包まれ、不思議な余韻に包まれる。筍風味のクリームスープは後味に残る筍が出しゃばらずにギリギリのところで寸止めされ、もうちょっと飲みたい!という欲望を気持ちよく無視してくれるものだ。

フランス料理
サラダ仕立ての色合いも美しい
九州は玄界灘の鯛を使ったサラダ。キウイフルーツが隠されて、きゅうりとワサビを使ったドレッシングが添えられる。彩りの美しさにだけ目が行きそうだが、一つひとつの野菜に味があり、味わいと食感、そして鯛の新鮮さのバランスと見せ方でテーブルが一気に明るくなる。一瞬この料理は自分でも作れそうと思ったのだが、食べ終わった後には絶対にその領域には近づけないと感じた一皿だ。


フランス料理
今日の一番はこれだ。ディナーメニューからの一皿。
ディナーメニューにある穴子と筍のリゾット包み焼き。うーん、言葉が出ない。ゴボウのピューレと穴子の煮汁をあわせた赤ワインソースにアラン・デュカスもさぞかしびっくりしたことだろう。これが京都風フレンチなのか?日本風創作フレンチ?日本の素材を使った新しいフレンチ?どれも違う。偉そうに答えを言うつもりはないが、一つ言えるとしたら奥村直樹のフランス料理だ。

同じくディナーメニューからオマール海老とアスパラガスのシャルロット(前頁)。ホワイトアスパラのムースが詰められ、トマトのクーリが添えられる。今が旬のアスパラをふんだんに使った料理だが、オマール海老のぷりっとした食感が季節を感じる味わいを彩る。

フランス料理
上品に仕上げたカレー風味のソースが印象的
ワインはオーストラリアの白ワインと甲州ワインを交互にいただくが、シャンパーニュで最後までいけるような気もするし、いや、今日は正直言ってワインとのマリアージュが同でもいいくらい料理に集中していた、私にとっては珍しく不思議な体験でもあった。ワインのないフランス料理は出汁の効いてない御椀と同じだから、なんて言いながら今日はワインのことをすっかり忘れていた私。ちょっと情けないか。

赤座海老はポテトで包まれ、クスクスが添えられる。カレーソースとあったが、これまたストライクゾーンギリギリのところを攻めてくる繊細な味わいだ。単純に「旨いよね、この料理」と語り合えるものだ。これも何か懐かしく、どこかで食べたようだけど思い出せない、でも決して食べたことのない料理。

フランス料理
香りが沸き立つようだ
メインディッシュはスズキのパイ包み。おっと最後に伝統的フランス料理かと期待が高まるが見事に外してくれる。上品さを纏う赤ワインソースと豆のピューレが溶け合い、言いようのないマイルドな気分にに包まれる。トマトのクーリよりも野菜かな、という気もしないでもなかったがそれはあくまで好みの問題。

デザートで盛り下がるのは許されないが、奥村シェフは最後まで息を切らすことなく突っ走ってくれた。フルーツのグラタンにサバイヨンソース、大葉のソルベに黒ゴマのフィナンシェケーキ。いろいろ載せられたデザートを楽しみたいのが日本人。あっち食べてこっちも食べるスタイルが好きなだけに、彩りの豊かさとも重なってしっかり満足。

デザート
個人的にも大好きなフルーツグラタン
パンも4個と料理もこれだけ食べてお腹がもたれないのは不思議だ。今日の会食に無理やりお付き合いいただいたネットオークションガイドの堀切美加氏の言葉が印象的だった。

「京都に行きたくなったよ、わたし。」

フランスと東京、そして京都がつながった瞬間だったかも知れない。

<あとがき>
今回の奥村シェフの料理は4月28日(月)までランチ、ディナーともに青山のブノワで楽しめます。今回の料理、一言で言いますと「いや、ほんとうに旨かった!」。さすが京都の料理人。さあ、次回からのフランス人シェフたちは奥村氏に勝てるかな?と興味津々であります。

東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山 10階 
ブノワの紹介記事
予約Tel:03-5468-0881

ランチ  8,400円 (税・サ込)
ディナー15,750円 (税・サ込)
(料金には食前酒ならびにコーヒー又は紅茶が含まれます)
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※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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