よく観ると店先でハーブを栽培している |
オヤジの街、虎ノ門
弁護士事務所やオフィスビルが立ち並ぶ、まさに”伝統的な”ビジネス街。路地裏には昔ながらの飲食店が点在しているが、昨今の再開発の影響か空き地も目立ち、ビルの隙間から東京タワーの眺めが良くなったスポットでもある。その一角に、店のエントランスにデカデカとシェフ自身の半身の写真を飾るレストランがある。取り上げられた雑誌の記事を飾る店は多いが、ご自分の写真を飾るとは、よほどの神経の持ち主に違いない。
シェフはオヤジフレンチというタイトルでブログを書いており、切れ味鋭い、しかしちょっととぼけた小話は痛快だ。店ができるまでのいきさつや苦労、そして料理をシェアする度に小皿を取り替えるゲストに対し、苦言を呈するシェフの姿など包み隠さずの話が書かれている。実に見事な文体、うーむ、なんというか絶妙な間の取り方で読者に語りかける。
私もmixiでその存在を知り、まずは一人でこそっと出掛けてみたのが今年の2月のことだ。カウンター席が5席あるが、どうやらそこが特等席のようだ。
センスが光るロゴと看板 |
ドアを開けると地下に降りる階段がある。いい匂いが階下から立ち上ってくるのがわかる。そろりと降りるとそこはもういきなりダイニングだ。専門のサービスがいるわけでもなく、調理担当の若い方が荷物を預かり席に案内してくれるのだ。
恐る恐るカウンターに座る。なんせ、ブログを見る限り恐そうなシェフのようだ。お行儀良くしないと怒られそうだ。
何人かで出掛けて料理をシェアするために取皿をたくさん使うゲストを一喝したとか、最初の頃のブログは痛快だった。今はそんなことはなさそうなのだが、オヤジフレンチという看板のもと、シェフはゲストを非常に良く見ている。恐いくらいに優しい表情で、がっつくオヤジゲストを見つめている。そうか、目でできるサービスってあるんだ、と気付くのに時間はそうかからない。
漢(オトコ)の粋というブログでは「旨かったけど死にそうだった」という表現が載っている。まさにその通り。何も知らずに出掛けて、前菜とメインをごく普通に頼むとデザートにたどり着くにはちょっと厳しくなる。
オヤジ度数を上げるなら食前酒はパスティスから |
オヤジのためのオヤジのフレンチという触れ込みだが、先日、投資ファンドの社長が外国人を接待したのでいいところがないかと相談を受けた。散々いろんなところで贅を尽くした接待を繰り返しているようなこともあり、ここは半ば冒険でサラマンジェを紹介したことがあった。スーツ姿の男4人、見事な食べっぷり、呑みっぷりだったようだ。特に外国人のお客様は大満足だったと聞いた。
男一人、または男同士で賑やかに、そして静かに料理とワインが楽しめる数少ないレストラン、サラマンジェ。
いわゆる創作料理はひとつもない。すべてがリヨンに根ざす歴史あるフランス料理の世界だ。見た目の美しさ?ないない。あるいのはホンモノの料理の美しさのみ。
さあ、それではサラマンジェ・ド・イザシ・ワキサカの料理の世界を覗いてみよう。