フレンチ/東京のビストロ

スリジィエ(新橋)(2ページ目)

新橋は烏森神社の近くにある、恐らく日本最小のフレンチ。しかし、丁寧に仕込まれた繊細な料理は素材の力が漲り、シェフのこだわりの気持ちがふんだんに散りばめられている。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

牡蠣
ほっとする牡蠣のグラタンスープ

桜のカウンター席

手前側に3人、4人と並ぶと奥の席には到達できない狭さ(その場合は勝手口に案内されてそこから入店となる)。ワインの保管場所が小さいゆえにもどかしくなるワインリスト。それ以前にとてもわかりづらい場所にあるという不便さ。

しかし、一旦そのカウンターを前にすると、気分はすっと切り替わる。

桜(スリジィエ)の一枚板で作られたカウンターの奥には黙々と『仕事』を進めるシェフの姿。物腰の柔らかな表情から繰り出される料理は、ポーションは小さいけれど「力」がある料理だ。しなやかな力強さというべきかも知れないが、その小さな空間に作り手の明確な意志が感じられる。

(力というのは素材の持つ力とそれを引き出す料理人の力、そしてそれらが作品として皿に盛られた時の料理の力を意味しており、料理を判断する私の一つの基準。)

ノルウエイサーモン
食欲をそそる色使いにも注目したい。
例えば野菜。生産者の顔が見える野菜、肥料を極力押さえた農法で作られた野菜が揃い、ほとんどの料理に強い味わいを感じる野菜が添えられている。

料理人の技術を介して、より素材の味は上品に引き立てられているところから、見えないところでの正確な仕事ぶりが見て取れる。ありきたりの言い回しだが、素材の持つ旨みを最大限に引き出している、とはこのことだろう。

牡蠣のグラタンはほっとする一皿。クリームやチーズの味わいのバランスがよく、付け合せの野菜達の奥行きある味わいや白身魚のすり身を添えるなど、脇もしっかり固めたところが実に嬉しい。

ビーフストロガノフ
本音はもう少し量が欲しい。
ノルウエイサーモンのグリエは非常にシンプルな一皿。これも主役のサーモンの周りを彩る野菜一つひとつの味わいが重なり合い優しく調和していく。シンプルが故に美しさが引き立つ料理だ。

この日のメインはビーフストロガノフ。柔らかく煮込まれた肉に絡む奥行きあるソースが印象的。量はそれほどでもないのだが、後味の余韻はとても長い。

スリジィエの料理を前にしたときに浮かんだ言葉が「調和」。味わいといい、色合いといい、素材といい、様々な要素の調和が取れた優しい料理に仕上がっている。

小さいが故にいつも混みあっている。9時半頃から二回転目の予約を取ることも多い。遅い時間からのほうがゆっくり楽しめるだろう。格安なコースもあるがアラカルトでワインを楽しむこともできる使い勝手さも心地よい。ワインを選ぶ楽しみがもう少しあればいいなと思うのだが。。。

デザート
デザートで辿り着く満足感の余韻
満腹感はないかも知れないが『満足感』に浸れるカウンターは魅力だ。料理人が一人しかいなくても、カウンターだけであってもフランス料理を感じる楽しさは同じなのである。

穏やかなシェフを前にして、お一人様フレンチも楽しめるはず。

ビストロ スリジィエ
東京都港区新橋2-15-17
03-3508-0705
日曜日及び祝祭日
18:00~24:00

地図
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